生存企業はわずか3割。「民事再生法」適用企業のその後
民事再生法の施行から16年。民事再生法を申請した9,406件のうち、進捗が確認できた法人7,341社を対象に追跡調査を行った。東京商工リサーチによると、生存企業はわずか3割(2,136社)という。
本年3月に成立予定の平成29年度税制改正では、M&Aの実行を容易にするための種々の改正が予定されていますが、ここでは会社分割の税制適格要件の改正によりグループ内の事業の切り出しが容易になる点を取り上げます。
会社分割はグループの事業の一部を第三者に譲渡する手法として有用な手段ですが、現在の法人税法上の税制適格要件のうち、「支配法人による分割会社及び承継会社への支配関係が分割後も継続することが見込まれていること」という要件(支配関係継続見込要件)との関係で、事業売却のための会社分割が非適格分割と取り扱われるという税務上の問題がありました。例えば、親会社が①100%子会社(A)の売却予定事業を吸収分割又は新設分割により別の(新設の)100%子会社(B)に承継させた後で②B株式を第三者に譲渡する取引は、Bが親会社の支配から外れるため支配関係継続見込要件を充足できず、分割会社であるAは移転資産の譲渡益について課税されてきました。
今回の税制改正では、上述の支配関係継続見込要件が「支配法人による承継会社への支配関係が分割後も継続することが見込まれていること」という内容に変更されることが予定されています。この変更後の要件のもとでは、支配法人と分割法人の関係が問われないため、上述の例でAとBの役割を逆転させ、①吸収分割又は新設分割によりBに売却予定事業以外の事業を承継させてAに売却事業を残し、②A株式を第三者に譲渡すれば、当該分割の結果は実質的には前述の分割のそれと同様であるにもかかわらず、支配関係継続見込要件を充足すると考えられます。したがって、その他の適格要件を充足することにより、上記の分割を適格分割として行うことができ、分割法人であるAにおいて譲渡益課税は生じないことなります。このように、平成29年度税制改正が成立すれば、事業売却のための分割が非適格分割となるという税務上の問題が解消されることになると考えられています。
上記の改正は2017年10月1日以降に行われる分割に適用されることが予定されており、同日以降、以上の仕組みを用いて企業による選択と集中がより活発に行われることが期待されます。なお、上記は支配者が法人の場合ですが、支配者が個人の場合にも同様の取扱いを受けることができるのか、今後公表される改正案が注目されます。
なお、M&A関連の他の重要な税制改正として、スピンオフ税制の導入とスクイーズアウトに関する改正があり、これらについては当事務所発行のCORPORATE NEWSLETTER 2017年1月号 (vol.19) が取り扱っております(http://www.mhmjapan.com/ja/newsletters/corporate-nl/20.html)。
弁護士 大石篤史
03-5223-7767
atsushi.oishi@mhmjapan.com
弁護士 栗原宏幸
03-6266-8727
hiroyuki.kurihara@mhmjapan.com
文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2017年2月号Vol.38より転載
関連リンク 【M&Aと税務】平成29年度税制改正の大綱
民事再生法の施行から16年。民事再生法を申請した9,406件のうち、進捗が確認できた法人7,341社を対象に追跡調査を行った。東京商工リサーチによると、生存企業はわずか3割(2,136社)という。
森・濱田松本法律事務所が配信する「Client Alert」より。今回は、ISS 議決権行使助言方針における買収防衛策基準の厳格化をテーマに取り上げる。