トップ > 調べる・学ぶ > M&A実務 > M&A法務 >【法律とM&A】二段階買収案件の株式取得価格決定申立てに関する裁判例

【法律とM&A】二段階買収案件の株式取得価格決定申立てに関する裁判例

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt
※画像はイメージです

二段階買収案件の株式取得価格決定申立てに関する裁判例
(2016年7月1日付最高裁決定を踏襲した最初の事例)

 2017年1月18日、大阪地裁は、当時東証二部上場企業であったX社の株式の32.74%を保有していた多数株主がX社に対して行った二段階買収(公開買付けと全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウト)ついて、X社の株主が取得価格の決定の申立て(会社法172条)を行った事案について、取得価格は公開買付価格と同額に定める旨の決定をしました。

 当該事案に先立ち、2016年7月1日、最高裁第一小法廷は、構造的な利益相反関係が存在する場合であっても、独立した第三者委員会や専門家の意見を聴く等、利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ、また、公開買付けに応募しなかった株主の保有する株式も公開買付価格と同額で取得する旨が明示されている等、一般に公正と認められる手続きにより公開買付けが行われ、その後に公開買付価格と同額で全部取得条項付種類株式の取得が行われた場合には、これらの取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り、取得価格は公開買付価格と同額とするのが相当であるとし、手続きの公正性が認められる本件では、公開買付価格と同額の価格が「公正な価格」であると判断しました。

 本地裁決定は、上記最高裁決定を踏まえ、一連の取引が一般に公正と認められる手続きにより行われたかどうかを検討し、取得価格を公開買付価格と同額に定める旨の決定をしました。本地裁決定は、上記最高裁決定後、二段階買収案件の株式取得価格について判断を示した最初の裁判例であり、手続きの公正性を重視する考え方が再確認されたという意味において、今後の実務の参考になるものと思われます。

弁護士 大石  篤史
03-5223-7767
atsushi.oishi@mhmjapan.com

弁護士 坂㞍 健輔
03-6213-8108
kensuke.sakajiri@mhmjapan.com

文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2017年7月号Vol.44より転載

NEXT STORY

特定建設業許可について

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2017/5/17
2017.05.17

所在不明株主の株式売却・買い取り制度

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2017/4/5
2017.04.05

【法律とM&A】株式併合による少数株主対策

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2017/1/6
2017.01.06

【法律とM&A】株主リスト

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/9/28
2016.09.28

【M&Aインサイト】表明保証保険

森・濱田松本法律事務所
| 2016/8/28
2016.08.28

【法律とM&A】リバースモーゲージについて

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/8/11
2016.08.11

【法律とM&A】法定後見制度と任意後見制度

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/6/22
2016.06.22

【法律とM&A】土地境界について~土地評価との関係

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/6/9
2016.06.09

【法律とM&A】経営承継円滑化法の遺留分に関する民法特例とは?

司法書士法人・行政書士法人星野合同事務所
| 2016/5/16
2016.05.16

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5