表明保証保険とは、M&A取引の買主又は売主が、株式譲渡契約等に規定された表明保証が不正確であったことにより被る経済的損害を補償する保険です。買主が被保険者となる場合もあれば、売主が被保険者である場合もあります。かかる保険は、表明保証違反から生じる当事者の経済的損害を保険会社が負担することで、売主・買主間における表明保証違反に起因する補償の範囲に関する主張の乖離を埋めて、M&A取引を成立しやすくする機能を有しています。
表明保証保険には、(i)広範な免責事項が定められていること(例えば買主が被保険者となる場合、一般的にデュー・ディリジェンスで判明した事項は免責対象となります)、(ii)保険会社により実施される引受審査(デュー・ディリジェンスレポートや株式譲渡契約書等のレビュー等)には時間的・経済的な負担がかかること等、その利用に際しては留意点が多いのも事実です。
表明保証保険は欧米ではかなり普及しておりますが、近年、日本企業によるアウトバウンドのM&Aにおいても、その利用を検討する機会が増えてきています。特に、入札案件における競合ビッダーが表明保証保険の利用を前提に補償の範囲を限定して売主と交渉しているような場合や、売主がプライベートエクイティファンドであるような場合は、保険料や現実的なリスクも勘案の上、表明保証保険のメリット・デメリットについて十分に検討する必要があるといえます。
弁護士 大石 篤史
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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2015年6月号Vol.18より転載