M&A:経営権争奪の局面における第三者割当てによる新株等発行について、不公正発行に該当するとしてその発行を差し止めた裁判例

 JASDAQ 上場の発行会社 X は、2016年12月21日開催の取締役会において、2017年1月6日を払込期日とする新株及び新株予約権の発行(「本新株等発行」)を決議しましたが、これに対して、X の発行済株式総数の 44.44%を保有する元代表取締役 Y が、本新株等発行は「著しく不公正な方法」(会社法 210 条 2 号)による発行に該当するとしてその差止めを求めたところ、大阪地裁は、2016年12月27日、本新株等発行を差止める仮処分決定を行い、2017年1月6日、当該仮処分決定を認可する決定(「本決定」) を行いました。

 「著しく不公正な方法」による株式等の発行が問題となった裁判例においては、大要、①会社の支配権について争いがある場合で、②既存株主の持株比率に重大な影響を及ぼす株式等が発行される場合において、③当該株式等の発行が既存株主の持株比率を低下させ現経営陣の支配権維持を主目的とするときは、④特段の事情がない限り、「著しく不公正な方法」による発行に該当すると認定する手法(いわゆる「主要目的ルール」) が用いられていました。

 この点、本決定は、「経営権争奪の局面における第三者割当による新株又は新株予約権の発行は、…特段の事情のない限り、現取締役らの経営権維持を目的とするものであり…不公正発行に該当するものと推認できる」として、上記①及び②の事実のみをもって③の支配権維持を主目的とすることが推認されるとも解され得る判断を示し、発行会社の資金調達目的の実体性、合理性等について詳細に認定することなく、本新株等発行が「著しく不公正な方法」による発行に該当すると認定しています。

 本決定がどの程度の先例的価値を有するのか現時点では不明であるものの、経営支配権の争いが生じている局面における新株等発行の「著しく不公正な方法」への該当性を判断する上では考慮すべき裁判例であると考えられます。

弁護士 大石  篤史
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文:森・濱田松本法律事務所Client Alert 2017年7月号Vol.43より転載