野菜や花を育てる時、栄養分を集中させたい頂芽以外の不要な枝や芽を取り除く「芽かき」という作業を行うことがあります。これと同じように、事業再生の現場でも、優良事業だけを残し、不良資産や不採算部門を切り離す第二会社方式という手法が用いられる場合があります。

例えば、会社分割スキームを活用して、優良事業を承継会社や新設会社に移管するとともに、不採算事業を分割会社に残した後、分割会社で特別清算などを行う方法がこれに当たります。

第二会社方式はスムーズな事業再生を可能にする方法ではあるものの、切り離された分割会社の債権者にしてみれば承服しがたいというケースも起こりがちです。

特に残された債権者損害を与えることを承知で行われる会社分割「濫用的会社分割と呼ばれています。今回は、こうした濫用的会社分割に関する規制について確認してみることにしましょう。 

濫用的会社分割に対する規制はあるか?

債権者が濫用的会社分割に対抗する方法には複数のものが考えられます。例えば、会社法429条1項(取締役の第三者に対する責任)にもとづいて取締役に対して損害賠償請求をする方法です。この場合、取締役の職務遂行上、悪意または重過失があれば債権者の保護が図られます。

また、承継会社や新設会社が分割会社の商号を続用している場合には、会社法22条1項(譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任)を類推適用して、債権者が承継会社や新設会社に対して債務の履行を求めることが考えられます。

こうした方法に加え、民法424条1項(詐害行為取消権)を行使して会社分割の効果を取り消すという方法もあります。詐害行為取消権というのは、債務者が債権者を害することを知りながら行った行為の取消を裁判所に請求することができる権利を指します。これを濫用的会社分割に適用しようとするものです。

実際、債務超過の状態にあった会社が新設会社分割を行った事例におい詐害行為取消権が認められた最高判決平成24年10月12日)があります。この最高裁の事案では特に組織行為である会社分割に対して取消を認めてよいのかが争点となりました。

なお、上記のような方法以外にも、承継会社や新設会社と分割会社を同一のものとみなす「法人格否認の法理」により債権者の保護が図られたケース(福岡地判平成22年1月14日)などもあります。