合併のあと、労働保険の手続きはどうしたらよいのでしょうか?」

会社が合併するにあたって、労務手続きはどのように行えばよいのでしょうか。素朴なギモンM&Aの労務 シリーズの第2回は、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きです。

 労働保険とは、労災保険と雇用保険のことを指します。その手続きにおいて、とくに雇用保険については少し手間がかかります。

 第1回で述べたとおり、合併には、①吸収合併(複数の会社が合併する際に1社が存続会社となり、他の会社はその存続会社に吸収され消滅するかたちになる)と、②新設合併合併に関わるすべての会社=当事会社がいったん解散して新会社をつくり、その新会社が、当事会社の権利や義務などの法律関係を引き継ぐかたちになる)があります。この枠組みを基準に考えていきます。

事業の種類が一緒かどうかで変わる「労災保険の手続き」

 労災保険については、M&Aの前後で事業の種類が一緒かどうかで変わってきます。労災保険料の計算の基礎となる保険料率が業種ごとに異なるからです。

 まず、事業の種類が同じ場合は、上記の吸収合併でも新設合併でも、消滅する会社(消滅会社)としては、労災保険の適用を廃止します。ただし労災保険の適用事業所の廃止届といったものはありませんので、消滅した日から50日以内に下図のような「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書」を所轄の労働基準監督署に提出し、労働保険料の清算を行います。

 そこで不足額が発生した場合には保険料の納付を行い、反対に充当額が出た場合は、下図のような「労働保険料還付請求書」を提出して保険料の還付を受けます。この労働保険精算手続きにより、労災保険の適用は廃止され、終了となります。

 なお、建設業の場合は特殊で、労災保険と雇用保険を分けて適用する、いわゆる二元適用事業所ですので、事務所の労災分は消滅した日から50日以内に所轄の労働基準監督署に、雇用保険分は消滅した日から50日以内に都道府県労働局に、それぞれ申告納付する必要があります。

 一方、存続する会社は消滅会社で見込まれる概算保険料を計上しないといけません(増加概算保険料)。そして、賃金総額の見込額が当初の申告より2倍を超えて増加し、かつ、その賃金総額で計算した概算保険料の額が申告済の概算保険料よりも13万円以上増加する場合に、増加額を増加概算保険料として申告・納付します。その申告書は、前述と同一の「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書」の用紙を使用します。

 また、消滅会社に営業所・支店など複数の事業所がある場合には、継続事業一括の変更申請も必要となりますので、ご注意ください。

  次にM&A後に事業の種類が異なる場合です。この場合、消滅会社では以前の事業を継続していることになるので、労災保険の適用事業としては廃止されることなく継続されます。消滅会社の料率の計算も以前の事業のままであれば、変わりません。ただし、消滅会社としては会社名、所在地、事業主などの変更が伴いますから、M&A後の所轄の労働基準監督署に「労働保険名称、所在地変更届」を提出します。