【法律とM&A】二段階買収案件の株式取得価格決定申立てに関する裁判例
今回は、二段階買収案件の株式取得価格決定申立てに関する裁判例をご紹介します。これは二段階買収案件の株式取得価格について、2016年7月1日付の最高裁決定を踏襲した最初の事例となります。
今回は税務の話ではありません。
どちらかというと財務系のお話です。要はカネの世界のお話ですね。金融機関がお金を貸す場合、スポンサーがお金を出資する場合、などお金を貸す、借りる場面。お金を出す側とお金を出してもらう側と基本的には、どちらが力(ちから)関係が強いと思いますか?
例えば、あなたが誰かにお金を貸すとしたら、貸す側、借りる側、どちらが力が強いと思いますか?
例えば、あなたが誰かにお金を借りるとしたら、貸す側、借りる側、どちらが力が強いと思いますか?
言葉を変えてみると、、、
お小遣い制度を採用している御夫婦で奥さんが財布を握っている場合、どちらが力が強いと思いますか?
通常は「お金を出す方」ですよね。お金を出す方が納得しなければ、お金は引き出せません。金融機関がお金を貸す場合も、スポンサーがお金を出資する場合も同じです。基本的にはお金を出す方が立場が強いのがほとんどです。(もちろん、実際は違うケースもあります。金融機関が「お金を貸させていただく」ようなケースなどは逆ですけど。でもそういう会社は借りる必要が無かったりします。)
例えば、金融機関がお金を企業に貸す際に「特約条項」(特別な約束)を付す場合があります。スポンサーが出資する場合も同様です。
もしも、この「特約条項」を呑めないのであれば、「こちらが提示する条件が呑めないの? じゃあ、金は出さないよ。他の人に出してもらえば」ということです。
この場合の「特約条項」を「コベナンツ 」と言ったりします。
ウィキペディア(Wikipedia)では
『コベナンツ(Covenants )は社債や金銭消費貸借契約等の資金調達の際に、資金供給側の不利益が起きた場合に契約解除や条件の変更ができるように契約条項中に盛り込まれる、制限条項あるいは誓約条項である。
語本来の意味では、「誓約」を意味する。一方当事者が他方当事者に対し、ある行為をすること、又はしないことを誓約するのである。』
と書かれています。
例えば、通常の金融機関の定型的な金銭消費貸借契約書に記載されている一般的な「期限の利益の喪失 」条項(倒産や約束反故)などとは区分して「コベナンツ」などと会話の中で指したりするのです。
例えば、あなたが私にお金を貸したとします。毎月の返済や利息の支払いはもちろんのこと、私に対して、
・ 体重は毎月月末時点で○○kg以下を維持すること。
・ 毎月の生活費の出費は○○円以下とすること。
・ 週に1回、ほのぼの絵日記を書いて提出すること。
などを条件に提示するのです。
「上記条項を満たせない場合、一括で弁済するものとし、強制執行などの手続きを行った場合も異議を申し立てない」的な条項を盛り込むのです。(あくまでも例示です。)
私(借り手)は、それが条件が呑めないなら、あなた(貸し手)からの借入は断念することになります。借りることを断念するか、他の貸し手を探すことになります。
そして、もしも、私(借り手)が、その条件を呑んで借りるからには約束を守る必要があります。
これらの「条件的な特約条項」を日常会話の中で、「コベナンツ」と呼んだりするのです。
企業の場合の条件は色々です。そもそも公序良俗に反する場合や法令に抵触する場合でない限り、契約は有効ですから、お互いに条件を決めるのは自由です。
例えば、小売業であれば、
・ 「毎月の月次売上報告を行うものとする。毎月の月次売上は○○百万円を○月連続で下回らないこととする。」だとか、
製造業であれば、
・ 「毎月の生産及び受注報告を行うものとする。毎月の月次生産量は○○百万円を○月連続で下回らないこととする。」だとか、色々定められますよね。
どんな会社にでも共通するような条項としては、
例えば、
「決算日における金融機関からの借入金残高が、現金預金残高の○○%を上回らないこと」
「決算日における自己資本比率が○○%を下回らないこと。」だとか、
「経常利益額が月額○○○万円を○月連続で下回らないこと。」
「経常利益率が○%を○月連続で下回らないこと。」などとすることも可能です。
このような財務的な数値を基に約束を決めることを「財務制限条項」などと呼ぶこともあります。
例えば、みずほ銀行さんのHPにはこう書かれています。
『 一般的なものとして以下の財務制限条項があります。どの条項を採用するかはお客さまとご相談させていただきます。
[1]純資産額維持条項(前決算期の75%維持 等)
[2]その他貸借対照表に係るもの(有利子負債制限、自己資本比率維持 等)
[3]キャッシュフローに係るもの(利益水準、インタレスト・カバレッジ・レシオ水準 等)
[4]格付維持条項 他』
また、人によっては、ある条件がある事象をもたらすような条項という意味で「トリガー条項 」と表現する人もいます。
実際には、このような条件付き融資・出資などは金融業界(例えば、金融機関やベンチャーキャピタル など)では普通に行われています。
もちろん、言葉の定義はお互いに誤解が生じないよう、なるべく細かく定義付けをします。
このような資金調達(出資や借入)は個別案件では珍しくありません。シンジケートローン などが組まれるようなケースなどでも一般的かも知れませんね。
コベンナンツを付けられる融資や出資についてはきちんと内容を理解してハンコを押しましょうね。
M&Aなどの場面でも、売り手がどのようなコベンナンツが付された資金調達をしているのか、買収側も気にするところです。
個人的には、あんまり強烈なコベナンツや財務制限条項は他の債権者の利益も侵害しかねず、「やったもん勝ち」的なことになるケースもあるのではないかと思うのですが、公序良俗に反せず、法律で認められる範囲なら良いのでしょうかね。その辺は私は専門ではありませんので、何かあれば弁護士さん等にご相談くださいませ。
[著]節税ヒントがあるかもブログ メタボ税理士さん
[編集]M&A Online編集部
本記事は「節税ヒントがあるかもブログ」に掲載された記事を再編集しております。
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