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海外金融機関のコーポレート・ベンチャー・キャピタル活用事例

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通常、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(Corporate Venture Capital, CVC)は「事業会社」が戦略目的でベンチャーなどへの投資を行うための主体と説明される。

しかし、近年、海外では「金融機関」がCVCを設立するという動きが見られる。金融機関がCVCを設立することの意味は何なのか。日本の金融機関の動向にも触れながら解説したい。

コーポレート・ベンチャー・キャピタルの意義とは?

CVCは事業会社が内部留保などを活用して自社の戦略目的でベンチャー企業への投資を行うものである。CVCはオープン・イノベーションとともに語られることが多い。つまり、社内の研究開発だけでイノベーションを実現するのではなく、自社の事業とシナジーを生むと思われるベンチャー企業と協業することによって、成長につなげようという目的を持つ。

このようなCVCの活用は世界的なトレンドでもある。米国のナショナルベンチャーキャピタル協会が公表した「NVCA YEARBOOK 2016」によると、米国のCVC投資総額は2010年に18億ドルであったものが、2015年には77億ドルと4倍以上に増加している。

(出典)NVCA YEARBOOK 2016 P.60より

海外金融機関のCVC活用事例紹介

世界の金融機関は従来から直接投資やグループ内のベンチャー・キャピタルを通じたベンチャー企業への投資を行ってきた。そのようなベンチャー投資とCVC投資との違いは、金融機関自身の事業すなわち金融業におけるシナジーを目的としているかどうかである。

つまり、金融機関によるCVC投資は、金融業務および金融サービスへの最新のIT技術の導入など、自社の生き残りをかけたイノベーション戦略の一環ということができる。別の言い方をすれば、FinTech企業などが有するリソースの活用が主目的となる。

それでは、海外の金融機関におけるCVC活用の事例をいくつか紹介したい。

1.シティグループ(米)、Citiベンチャーズ

米国では、シティグループが2010年1月に立ち上げたCitiベンチャーズが挙げられる。決済、データ分析、機械学習、セキュリティなどの分野をポートフォリオの対象としており、2012年9月にはモバイルを利用したクレジット決済サービスを提供するSquare、2016年4月にはスモールビジネス向けのファクタリングサービスなどを提供するBlueVine、2016年10月には機械学習を活用した不正対応サービスなどを提供するFeedzaiへの投資を行っている。いずれも投資金額や条件などは非公表となっている。

2.サンタンデール銀行(スペイン)、サンタンデール・イノベンチャーズ

スペインの大手銀行であるサンタンデールは2014年7月にサンタンデール・イノベンチャーズを立ち上げている。主にFinTech企業を投資対象としており、2015年5月には、第1号案件として、モバイル決済サービスを提供するイスラエルのMyCheckに対する500万ドルの投資を発表した。その後も、2016年9月に決済および送金処理速度に優れたブロックチェーン関連サービスを提供するRippleへの投資を発表するなど短期間に多くのベンチャーへの投資を実行している。

なお、サンタンデール・イノベンチャーズは設立当初1億ドルのファンドを組成したが、2016年にはファンド金額を2億ドルまで引き上げ、人工知能分野などへの投資を強化する方針を打ち出している。

3.BBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア)グループ、BBVAベンチャーズ

スペインなど多国籍の拠点を有するBBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア)グループは、2013年にBBVAベンチャーズを立ち上げた。同年7月には米Squareと同様のクレジット決済サービスを提供するドイツのSumUp、2015年1月には仮想通貨の決済プラットフォームを提供するCoinbaseへの投資を発表した。ただし、BBVAベンチャーズは2016年2月に閉鎖し、現在はVCであるプロペル・ベンチャー・パートナーズを通してFinTechへの取り組みを継続している。

4.その他(香港上海銀行、ロシアのズベルバンク)

海外金融機関によるFinTech投資は旺盛で、上記以外にも、香港などに拠点を有する英系大手香港上海銀行(HSBC)でも2億ドルのFinTechファンドを組成しているほか、ロシアのズベルバンクなどでも同様の動きが見られる。

日本の金融機関の動きは?

日本の金融機関では、明確にCVCを打ち出してFinTech投資を行うケースは少ない。しかし、VCやアクセラレータ・プログラムなどを通じて、FinTechベンチャーへの支援を行っている点では共通している。

1.三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、イノベーションラボ

MUFGでは、2016年1月に外部企業との協働を促進する取り組みとして「イノベーションラボ」を開設している。また、FinTech分野に参入する企業の事業化を加速させる「FinTechアクセラレータ・プログラム」を立ち上げているほか、銀行APIをテーマにしたハッカソン「FINTECH CHALLENGE」などを開催している。

2.みずほフィナンシャルグループ<8411>、みずほFinTechファンド

みずほフィナンシャルグループでは、2016年3月にみずほキャピタルが「みずほFinTechファンド」を組成し、同年11月にはクラウド会計ソフトなどを提供するマネーフォワードに対して投資を行っている。みずほ銀行は同ファンドに出資しているほか、SBIインベストメントが2015年12月に組成した「FinTechファンド」にも出資を行っている。

海外と日本で違いがあるのはナゼ?

日本においてCVCの活用が主流でない理由は、銀行法による議決権保有制限(いわゆる5%ルール)の影響である。5%ルールとは、銀行が事業会社の株式を保有する際、銀行の子会社と合計して5%を超えることを禁止するものだ。

もっとも、5%ルールに抵触しない範囲でCVCを活用している例はある。

たとえば、楽天グループ<4755>は金融業がメインではないものの、グループ内に楽天銀行などの金融機関を有している。同グループではCVCである楽天キャピタルを設立しており、2015年11月には「楽天FinTechファンド」の運用を開始した。

しかし、こうした規制は銀行がIT企業などのイノベーションを導入する障害となる可能性があるため、金融審議会のワーキング・グループを通して規制緩和が討議されてきた。そして、2016年5月に成立した改正銀行法では、銀行や銀行持株会社による保有制限が緩和されるに至っている。

今後、改正法を受けて、日本においても金融機関によるCVC設立が見られるかもしれない。

文:M&A Online編集部

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