こっそり学ぶ連結会計とM&A(2)連結会計に含める関係会社の範囲

連結範囲を想定してM&A戦略を考えることの重要性

2017年8月10日に発表されたソフトバンクグループの2018年3月期第1四半期(4月1日~6月30日)における営業利益は、前年同期比50.1%増の4,792億円となりました。

大幅な利益増加となった要因は、通称「10兆円ファンド」とも言われるSoftBank Vision Fund(SVF)およびその投資先が当該第1四半期から連結対象となったことにあります。

企業買収が行われると、買収先が連結範囲に含まれた途端に、連結グループの売上高や利益がかさ上げされます。M&Aが成長を早めるといわれる所以です。そのため、買収先が連結会計上どのように扱われるのかは、財務戦略上、非常に重要となってきます。そこで、第2回目となる今回は、連結会計に含める関係会社の範囲について解説したいと思います。

前回の記事はこちら

「子会社」「関連会社」「関係会社」はどう違う?

連結財務諸表あるいは連結決算書は、親会社が企業集団全体の財政状態や経営成績などを報告するために作成するものです。もちろん、非上場会社などで連結財務諸表の作成が義務付けられていない場合もあります。そのような場合には、経営管理目的で任意に連結財務諸表を作成したり、金融機関が貸出先の査定用資料として簡易な連結財務諸表を作成したりする場合もあります。

連結財務諸表を作成する際に、どのような会社あるいは事業体を連結範囲に含めるのかは、一見簡単そうですが、実は奥深い問題でもあります。連結範囲の具体的な解説に入る前に、一般によく使われる用語である「子会社」、「関連会社」、「関係会社」という言葉の意味を確認してみましょう。

イメージを理解していただくために、もっとも典型的なパターンを示すと、他の会社に50%超の株式を保有されている会社が「子会社」、他の会社に20%以上の株式を保有されている会社が「関連会社」ということになります。そして、親会社や子会社、関連会社などを総称して「関係会社」と呼んでいます。つまり、関係会社が一番広い意味の用語ということになりますが、この関係会社の中で、関連会社の株式を保有している側の会社を特に「その他の関係会社」と呼んでいます。これらの関係を図示すると下記のようになります。

連結の範囲に含まれるのは「子会社」

簡単にいうと、上記のうち子会社が連結範囲に含められることになります。これに対して、関連会社には「持分法」と呼ばれる会計処理が適用されます。

前回の記事で紹介したように、連結会計では、親会社と子会社の財務諸表を合算し、債権債務や取引などを消去することにより連結財務諸表を作成します。しかし、持分法では、関連会社の財務諸表を合算することなく、関連会社の資本や損益のうち投資会社(その他の関係会社)に帰属する部分だけを、連結貸借対照表に計上されている関連会社株式の金額に加減することになります。

つまり、子会社を連結範囲に含めた場合には、子会社の売上や原価、経費などが連結損益計算書上の増加要因になるとともに、子会社の資産、負債などが連結貸借対照表に計上されることになりますが、関連会社に持分法を適用した場合には、勘定科目の1つである関連会社株式の金額が変動するだけです。そのため、子会社に適用される連結会計を「完全連結」、関連会社に適用される持分法を「一行連結」と呼ぶこともあります。

なお、持分法の処理を行うのは、連結財務諸表を作成している場合だけであって、子会社がなく、その他の関係会社と関連会社の関係だけである場合には、そもそも連結財務諸表を作成しないので、そのような処理は行われません。

「支配力」と「影響力」

50%超の株式を保有されている会社が子会社、20%以上の株式を保有されている会社が関連会社と簡単に解説しましたが、ここでは会計基準に沿って定義を確認してみることにしましょう。

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」の第6項では、親会社および子会社の定義が下記のように示されています。

会社定義
親会社 ・他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関。以下「意思決定機関」という。)を支配している企業
子会社 ・(親会社の定義にある)当該他の企業 
親会社及び子会社又は子会社が、他の企業の意思決定機関を支配している場合における当該他の企業も、その親会社の子会社とみなす

筆者作成

ここでのポイントは、株主総会などの意思決定機関を支配しているかどうかです。親会社と子会社の関係を「支配」を基準にして決定することから「支配力基準」と呼ばれています。ただ、この支配をどのように判定するかという点もまた難しいところです。

上記の会計基準では、「他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業」は、基本的に支配している企業に該当する旨が記載されています。つまり、発行済株式の50%超を保有している場合などが該当するというわけです。

企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」の第5項では、関連会社の定義が下記のように示されています。

会社定義
関連会社 企業(当該企業が子会社を有する場合には、当該子会社を含む。)が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の企業の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の企業

筆者作成

こちらでのポイントは、財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができるかどうかです。関連会社に該当するかどうかを「影響」を基準にして決定することから「影響力基準」と呼ばれています。

上記の会計基準では、「子会社以外の他の企業の議決権の100分の20以上を自己の計算において所有している」場合、基本的に重要な影響を与えることができる場合に該当する旨が記載されています。

「連結はずし」は粉飾決算の常套手段

実は、連結の範囲や持分法の範囲に関する基準や指針にはさらに詳細なルールが定められています。たとえば、0%以上40%未満、40%以上50%以下の株式を保有されている場合でも子会社に該当する要件、15%以上20%未満の株式を保有されている場合でも関連会社に該当する要件なども規定されています。

また、支配力基準によって子会社に該当すると判定された場合であっても、支配が一時的であると認められる場合や連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれのある場合には連結の範囲に含めないことになっているほか、企業集団の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に与える影響という観点で重要性が乏しい子会社は、連結の範囲に含めないことも認められています。

【連結範囲の検討フローチャート】

【連結範囲の検討フローチャート】
筆者・M&A Online編集部作成

さらには、連結や持分法に関する会計基準では、「企業」の定義を「会社及び会社に準ずる事業体をいい、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)」としており、会社だけでなく、たとえばSPE(特別目的事業体)などの組織でも、要件に応じて連結や持分法の対象になることを示唆しています。

このように、細かくルールが定められているのは、連結や持分法の範囲に含められるかどうかで会計数値が大きく変わってくるからに他なりません。また、そうした性質を利用して、別会社に損失を押し付けた上で連結の範囲から除外する「連結はずし」のような手法が粉飾決算に利用されることもあります。

そのため、子会社や別法人を設立したり、M&Aや投資目的により他法人を取得したりする場合には、連結や持分法の範囲について、監査法人との協議も含め、慎重に検討する必要があるといえます。

日本基準と国際財務報告基準IFRS)ではどのように異なるのか?

連結範囲の決定は、日本基準においても、国際財務報告基準IFRS)においても支配力基準によっているため、基本的な考え方は共通しています。ただし、IFRSには、支配が一時的であると認められる場合、利害関係者の判断を著しく誤らせる場合、子会社の重要性が乏しい場合に連結の範囲に含めないというような例外規定がありません。そのため、原則的にはすべての子会社を連結の範囲に含める必要があるという点で異なっています。

IFRSを適用しているソフトバンクグループでは、SoftBank Vision Fundが連結範囲に含まれるほか、SVFの投資先である子会社も連結範囲に含まれます。連結損益計算書の営業利益では、SVFを除く営業利益とSVF投資の成果を別段で表示しているので、当第1四半期の営業利益4,792億円のうち、SVF営業利益が1,052億円であること、SVFを除く営業利益は3,740億円と前年同期比17.2%の伸びであったこともわかります。

また、同社のセグメント情報では、第1四半期から新たにSVF事業という区分が加わりました。今後、ソフトバンクグループの連結数値を見る際には、これらの点を意識すると、より理解がしやすくなるでしょう。(次回に続きます)

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)