M&A特有の連結会計処理

一般に、子会社の判定は持株比率50%超、関連会社の判定は持株比率20%以上が目安となります。そのため、株式の取得や売却を伴うM&Aが行われると、連結の範囲や持分法の対象が大きく変動します。

ただし、M&Aと言っても、スキームや形態は様々です。特集4回目となる今回は、M&Aが行われた際に、その態様によって、どのような連結会計処理が必要となるか紹介したいと思います。

株式を100%取得した場合

まずはシンプルなケースとして、A社がB社の株式を100%取得した場合を考えてみましょう。この場合、A社が親会社、B社が子会社となり、B社はA社の連結財務諸表に取り込まれることになります。仮にB社の純資産が80で投資額が100だった場合、連結会計では投資と資本の消去手続として、純資産80と投資額100が相殺消去され、差額の20が「のれん」として計上されます。

連結損益計算書では、取得した時点から期末までのB社の損益が取り込まれることになります。たとえば、B社の売上規模が500であり、取得した時点から期末までの売上高が300であれば、取得した年度においては300だけが連結売上高に含まれます。もし、A社とB社の間で債権債務や取引がある場合、それらが相殺消去されるという点については、特集3回目の記事「連結会計の手続き」でも述べたとおりです。

株式の取得が100%未満の場合はどうなるか

M&Aでは完全親子会社になる場合だけでなく、51%取得する場合、66.7%取得する場合、80%取得する場合など様々なケースが考えられます。

少し余談になりますが、ちょうど50%の取得ではなく、「51%」など50%超の取得にする理由は、株主総会の普通決議の決議要件が「過半数」(会社法309条1項)となっているためです。

「66.7%」取得する場合、あるいは株式を売却しても「66.7%」は保有し続けるという場合もあります。これは株主総会特別決議の決議要件が「三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上」(同309条2項)となっているためです。特別決議では定款変更、資本減少、監査役解任、解散など会社の運営を左右する重要事項を決定することができるため、そのコントロールを維持したい場合における最低限の持株比率といえます。

さて、このように部分的な株式取得になる場合の連結手続を確認してみましょう。たとえば、C社がD社の株式を80%取得した場合を考えてみます。仮にD社の純資産が100で投資額が90だった場合、連結手続では、まず、この純資産100をC社持分(親会社持分)80(100×80%)とC社以外の持分(非支配株主持分)20(100×20%)に区分します。その上で、投資額90とC社持分80の差額10が「のれん」として計上されます。C社以外の持分20は「非支配株主持分」として連結貸借対照表の純資産の部に計上されます。

実際の取得は一括取得だけとは限らない

100%取得の場合と部分的な取得の場合の処理を紹介しましたが、実際には、一時に100%なり80%まで取得する場合もあれば、20%、30%、40%と徐々に持株比率を高めながら、支配を獲得する場合もあります。

また、すでに関連会社や非連結子会社になっている状態から連結子会社となる場合や、連結子会社となっている会社の株式を追加で取得する場合も考えられます。

これら段階取得、追加取得の処理についても、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」その他関連する適用指針などに定められたルールに従って行うことになります。

株式を売却した側の処理は?

それでは次に、子会社株式を売却した場合の処理を確認してみましょう。子会社株式を売却するケースには、一部を売却したものの、親会社と子会社の支配関係は維持している場合と、売却により子会社には該当しなくなる場合があります。

子会社株式の一部を売却し、親子会社の支配関係を維持している場合、まず、売却した株式に対応する親会社持分と非支配株主持分を減少させ、それらの持分と売却価額との差額は「資本剰余金」に加減するという処理になります。2015年3月31日以前には、この差額を子会社株式の売却損益の修正としていたため、連結財務諸表と個別財務諸表とで子会社株式売却損益の金額が異なるという現象が見られましたが、2015年4月1日以降は「資本剰余金」として処理されます。

株式の一部売却により子会社および関連会社に該当しなくなった場合、それ以降の連結財務諸表では、売却した会社に対する投資の額が個別貸借対照表上の帳簿価額で評価されることになります。

合併会社分割株式交換株式移転ではどのような処理になるか

M&Aのスキームとしては、現金による株式取得のほか、合併会社分割株式交換株式移転などが利用されます。以下では、それぞれの場合における連結会計の適用の要否について確認してみたいと思います。

合併

E社がF社を吸収合併する場合、F社が消滅して2つの法人格が1つになることを意味します。したがって、グループの決算を合算するための連結会計の適用はありません。会計上の合併処理としては、存在会社E社の個別財務諸表に消滅会社F社の資産負債などが引き継がれることになります。具体的な合併処理は上述の「企業結合に関する会計基準」などに従って行います。

会社分割

会社分割は「吸収分割」と「新設分割」に分けられます。G社が自社のY事業を「吸収分割」によりH社に譲渡した場合、G社にはH社の株式が割り当てられることになります。もし、これによりG社がH社を支配する関係が生じた場合には連結会計が適用されます。逆に、H社の既存株主が支配を継続する場合には連結会計の適用はありません

G社が自社のY事業を「新設分割」によりI社に譲渡した場合、G社にはI社の株式が割り当てられることになります。通常、新設されたI社には他の株主がいませんので、G社がI社を支配することとなり、連結会計が適用されます。

なお、会社分割には、上記のように分割承継法人(H社、I社)の株式が分割法人(G社)に割り当てられる「分社型分割」の他にも、分割法人(G社)の株主に割り当てられる「分割型分割」もありますが、ここでは割愛させていただきます。

(図)会社分割の場合

株式交換株式移転

最後に、株式交換株式移転が行われる場合を考えてみます。株式交換株式移転はいずれも完全親子会社関係を生じさせるものですが、完全親会社となるのが、株式交換の場合には既存会社、株式移転の場合には新設会社であるという違いがあります

たとえば、J社がK社との間で株式交換を行い、K社が完全親会社となった場合、K社の側で連結会計が適用されます。また、J社が株式移転を行い、新設会社L社が完全親会社となった場合、L社の側で連結会計が適用されます。

(図)株式交換の場合

(図)株式移転の場合

おわりに

4回にわたり「連結会計とM&A」について解説してきました。連結会計において、連結の範囲に含まれるのは基本的に「子会社」ということになります。しかし、少し視点を変えてみると、協力会社、協力工場はもちろんのこと、すべての得意先、仕入先のおかげで企業の経済活動が成り立っていると言うこともできます。

そういう意味では、個人事業を含むすべての経済主体を連結の範囲に含めて連結決算書を作成することも観念的には可能でしょう。仮にそのような連結決算書を作成するとしたら、あらゆるB to B取引はグループ内の取引として捨象されることになります。

そのとき完成した連結貸借対照表、連結損益計算書はどのような形になるでしょうか。もしかすると、人間の経済的営みとは非常にシンプルなものなのかもしれません。

文:北川ワタル(公認会計士)