「不正の概念とリスクへの対応」

※この記事は公開から1年以上経っています。
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 おはようございます。ビズサプリの後藤です。

「不正」と聞いて皆様どういったイメージを持つでしょうか。「よく新聞とかにでるけど、うちの会社は関係ないかな」という方が以外と多いのではないでしょうか。

 よく、日系の企業ですと、「うちにはそんなことする人いないから!」という話がでますが、現実としては、不正事例は後を絶ちません。

 こうした状況の中、不正の発生はレアなケースではなく、むしろ発生して当たり前なんだという意識が必要な時代になってきたのかなと思います(寂しい限りですが)。

 今回は「不正」の基本的な考え方をご紹介していきたいと思います。

1.不正の分類と具体例

 不正の分類の方法は一通りではありません。ここでは、公認不正検査士協会による分類をご紹介します。
 1.報告書不正:財務諸表数値の過大・過少計上。内部管理資料の改竄など。
 2.資産不正(流用):手元現金の横領。顧客からの預かり資産の流用。手形の持ち出しなど。
 3.汚職:取引先との競合によるキックバック。利益相反取引など。

 ではこれらの不正がどうしては発生してしまうのかについて、見ていきたいと思います。

2.不正の発生メカニズム「なぜ不正は起こるのか」

 そんなの分かってるよ!という声も聞こえてきそうですが、せっかく不正について取り上げているので、今一度発生のメカニズムについて整理していきたいと思います。

 不正発生を促進する条件として、よく以下の3つの事項が挙げられます。
 1.動機
 2.機会
 3.正当化

 動機をもう少し具体的に言えば、例えばギャンブルや投資で失敗して借金があるといったことになるかと思います。
 機会とは実際に不正を実施できる状態にあり、それが発見されにくい状態と考えるとわかりやすいかと思います。

 正当化とは、例えば自分はがんばっているのに正当に評価されていない、自分がやらなくても誰かがやるはず、不正を行わなければもっと悪い状況になる(ので不正を実施してもいいんだ)などとイメージするとわかりやすいかと思います。

 通常の流れで行けば、不正を行う動機があり、チャンス(機会)があり、かつ、自らの不正を正当化できる理由が見つかれば不正が発生するということになる(リスクが高い)かと思います。

 動機もないのにチャンスがあるからって不正を実施する人はよほどのリスクテーカーかなと思いますので(が、世の中色々な人がいるので一概には言えないですが)。

3.不正と内部統制

 不正は上述したメカニズムにより発生することになりますが、企業はどのような対策を講じる必要があるでしょうか。
 まず重要になってくるのは、当然、如何に不正の発生を「防止」するかになります。
 そのためには、上述した動機・機会・正当化といった不正発生を促進する条件への対応が必要になってきます。

 動機について言えば、例えばコミュニケーションを円滑にすることで、社員の経済的な悩みや精神状態の変化に気づく可能性が高まります。
 機会について言えば、業務プロセスの中で適切なチェック、事後的なモニタリングを構築できていれば、そもそも不正はできない、してもすぐ見つかるといった状況にすることができます。
 正当化については、倫理規程や教育といったところで啓蒙していくなどが考えられます。

 次に防止できなかった不正を如何に「発見」するのかになりますが、業務プロセスの中に発見的なコントロールを組み込む、または、独立したモニタリング(内部監査による検査など)を組み込むといった対応を取るのが一般的です。

 また、適切な職務分掌を構築するのも不正に対しては有効な対応となります。
 これらは、内部統制システムを適切に構築すればそれなりにカバーされるものであり、不正については良好な内部統制システムを構築することが非常に有効な対策になるのは間違いないかと思います。

4.まとめ

 不正への対応として内部統制システムの構築は非常に有効であることは間違いないと思っていますが、それでも中々不正は巷からなくなりません。

 不正は「動機があって、機会があって、正当化できる」場合に非常に発生可能生が高まることは間違いないと思いますが、必ずしもこの3つがそろわないと不正が発生しないとは言えないと個人的には考えています。

 例えば、動機が非常に強ければ、それ以外の条件がそろっていなくても不正は発生するかもしれません。
 「不正は普通に発生しうる」そういった視点で今一度内部統制を見直してみるのも良いかもしれません。

文:株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.004 2015.5.20)より転載

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