こっそり学ぶ連結会計とM&A(3)連結会計の手続き

連結決算作業で大変な部分といえば、子会社の取得や売却があった場合の処理、イレギュラーな取引で未実現利益や税効果会計が絡み合った複雑な処理などが挙げられます。しかし、最大のボトルネックとなっているのが、案外、子会社からの決算書回収だったというケースもあります。連載3回目となる今回は、連結会計をより深く理解すべく、具体的な連結決算手続を概観することにしましょう。

最初のステップは個別財務諸表の修正から

連結決算の手順は、簡単にいうと、親子会社の決算書を合算して、親子会社間の取引や債権債務を消去することです。しかし、決算書を合算するまでの段階にも様々な準備が必要となってきます。

企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第17項では「同一環境下で行われた同一の性質の取引等」について、親会社と子会社が採用する会計処理のルールは、原則として統一しなければならないことになっています。つまり、親会社と子会社が同じような取引に対して異なる会計処理を行っている場合は、連結手続の一環として、会計処理を統一するための修正が必要となります。

通常は、親会社の処理に合わせて子会社の処理を修正することになります。ただし、これは親会社と子会社が異なる会計処理を行っているというだけであり、必ずしも子会社の会計処理が誤っている訳ではありません。また、子会社の決算としては、すでに確定している場合も多いので、個別財務諸表の修正は連結手続のためのExcelシートや連結会計ソフト上でのみ実施することが一般的です。

為替やIFRSなどの影響も考慮する

日本の親会社決算書が円建で作成されている一方で、海外子会社の決算書がUSドルや人民元など外国通貨建で作成されている場合には、子会社の決算書を円建に為替換算する必要があります。その際には、どの時点の為替レートを使用するかなどについて会計基準や実務指針に従って処理を行うことになります。

また、親会社が日本基準、子会社がIFRSを適用しているというケースも考えられます。このような場合、原則的には同一の会計基準に統一した上で連結手続を実施すべきといえます。しかし、実務上の便宜を考慮して、のれんの償却など重要な影響が生じやすい一定の項目について調整を行うことを条件に、IFRSや米国基準で作成された子会社の決算書を連結手続に使用してもよい旨が実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」で規定されています。

連結決算の段取りは連結パッケージで

このように各社の決算書を合算するまでの段階においても、対応すべき事項は数多くあります。後述する連結上の消去手続や調整手続にも関連しますが、適切な連結手続を行うためには各子会社の情報を正確に把握しておく必要があります。そのための情報取集ツールのことを連結パッケージ(Consolidation Package)と呼んでいます。

連結パッケージは、スプレッドシートで作成される場合も、連結会計システムに実装されている場合もありますが、子会社の決算書や監査報告書とともに詳細な情報を統一の書式で親会社に報告してもらう資料のことを指しています。このような連結パッケージをうまく活用し、的確な情報収集を行うことが連結財務諸表作成の肝といえます。

決算書を合算したら「開始仕訳」を行う

連結会計の処理は、弥生会計、勘定奉行、ミロク会計など通常の会計ソフトの帳簿には反映されません親会社や子会社の個別の決算書には手を加えず、会計帳簿の枠外で連結の処理を行うことになります。そうすると、過去に行った連結会計の処理は、個別の決算書では引き継がれないことになります。

そこで、個別の決算書を合算したあとには、過去に行った連結会計処理の影響額を「開始仕訳」として反映させる必要があります。つまり、開始仕訳は連結決算における繰越処理のような役割を果たすものです。具体的には、連結決算を導入した当初からの投資と資本の相殺消去や損益の累計額などを反映させることになります。

消去手続の対象は投資と資本、債権債務、取引高など

連結決算でメインとなるのは、親子会社間の消去手続です。消去すべきものには、投資と資本、債権債務、取引などがあります。

まず、投資と資本の消去というのは、親会社の貸借対照表に計上されている子会社株式などの投資勘定と子会社の貸借対照表に計上されている資本金など資本勘定を相殺消去するものです。子会社株式は資金の運用形態として親会社の貸借対照表の左側、資本金などは資金の調達源泉を表すものとして子会社の貸借対照表の右側に計上されています。これらは表裏一体の関係にあり、連結グループの観点からは重複して計上すべきものではないため、消去が必要となります。

次に、債権債務の消去は、たとえば、親会社の子会社に対する貸付金と子会社の親会社からの借入金を相殺消去するものです。

また、取引の消去というのは、親会社の子会社に対する売上高と子会社の親会社からの仕入高を消去するものです。

投資と資本、債権債務、取引は、いずれも連結グループの観点で見ると二重に計上されていると考えられるので、消去されるものです。つまり、最終的に連結決算書に残る項目は連結グループ外の者に対する債権債務や取引ということになります。そのため、消去手続は内部取引消去と呼ばれることもあります。

未実現利益の消去

上記のとおり、親会社の子会社に対する売上高と子会社の親会社からの仕入高は消去されることになります。ここで、仮に親会社から仕入れた商品が子会社で売れ残っており、在庫として保有されている場合を考えてみましょう。

親会社の売上、つまり子会社から見た仕入には、親会社が販売時に上乗せした利益が含まれています。そうすると、子会社が在庫を保有している場合には、その在庫に親会社の利益が含まれたままになっています。

連結グループの観点で考えると、親子会社間の内部取引が行われているだけなのに、在庫に利益が含まれているのは適切といえません。そこで、親会社が上乗せした利益を消去するのが未実現利益の消去と呼ばれる処理です。連結グループ外に販売されたときに初めて利益が実現するものと考え、それまでの間は利益部分を控除しておくという趣旨です。

その他の作業(キャッシュフロー計算書、持分法など)

連結決算書はおおむね以上の手続により作成されます。ただし、連結キャッシュフロー計算書の作成方法は少し異なります。通常、連結キャッシュフロー計算書は、連結貸借対照表と連結損益計算書をもとにして、キャッシュの動きだけを抽出することにより作成されます。つまり、他の決算書のように、個別決算書を合算して、内部取引を消去するという方法ではなく、最初から連結ベースで作成されます。

実は、個別キャッシュフロー計算書を合算して、内部取引を消去することにより、連結キャッシュフロー計算書を作成するのが原則法なのですが、その方法では作業負荷が大きくなりがちです。そのため、連結ベースで作成する簡便法が一般的になっています。なお、作成される連結キャッシュフロー計算書は原則法でも簡便法でも同一のものとなります。

なお、一般的に出資比率が20%以上50%未満となる関連会社や重要性の観点から連結の範囲に含まれなかった子会社には持分法という処理が適用されます。持分法では、関連会社の決算書を合算することなく、連結貸借対照表に計上されている関連会社への投資勘定だけを調整する処理となります。これについては、前回の記事などもご参考にしていただければと思います。

まとめ

今回は連結会計上のテクニカルな話が多くなりましたが、連結会計の基本的な作業イメージは理解していただけたのではないしょうか。連結の会計基準や実務指針には細かい規定がある一方で、たとえば、12月決算の子会社と3月決算親会社を合算して連結財務諸表を作成することを認めているなど大雑把なところもあります。

このような連結会計の特性を念頭に置いて、有価証券報告書に掲記されている連結財務諸表と個別財務諸表の双方を見てみると、今までとは違った気付きがあるかもしれません。

次回は、M&Aが実施された年度において、どのような処理が発生するのかという視点で連結会計を捉え直してみたいと思います。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)/編集:M&A Online編集部