上場企業の間で希望退職者を募集する動きが広がりつつある。カスタムLSI製品を主力とするメガチップスは先に(18日)、5月末までに全社員の約5%にあたる40人の希望退職者を募集すると発表した。昨年は年間を通じて12社(東京商工リサーチ調べ)だったが、今年は3カ月足らずですでに7社に上る。このままのペースが続けば、前年件数を上回るのは時間の問題といえる。

米中貿易摩擦による中国経済の減速などを背景に、2019年3月期の上場企業の最終利益は3年ぶりに減少に転じる見通しで、固定費削減など経営効率化に向けた人員リストラが勢いを増す可能性もある。

メガチップス、半導体市況の悪化に対応

メガチップスは半導体市況の悪化に対応し、人件費など固定費を削減して収益構造の改善を進めるとしている。希望退職者の対象は3月末時点で満35歳の社員。3月25日~5月31日を期間に40人程度を募集する。退職日は6月30日。

同時に、2019年3月期の業績予想を下方修正。売上高950億円(従来予想1000億円)、営業利益4億円(同9億円)、最終赤字19億円(同7億円の赤字)とした。デジタルカメラ向けLSIやゲーム機器向けLSI(主に任天堂向け)の需要が想定値を下回ったのが主因。希望退職関連費用約3億円のほか、液晶パネル向けLSI事業のソフトウエア資産の除却損など約13億円を特別損失として計上するため、最終赤字幅は従来予想から12億円拡大した。

同社は民生用LSI中心の事業構造から、今後は車載、産業機器、5G(次世代通信システム)分野などに経営資源を投入し、事業構造改革を進める考えだ。

今年に入って希望退職者の募集に踏み切る企業が相次いでいる(表を参照。メガチップスまで7社を数える。

スポーツ用品小売り大手のアルペンは約300人の希望退職者を募集したところ、355人の応募があった。社員3250人(一部の子会社を含む)の1割以上にあたる。希望退職者の募集は1972年の設立以来初めてだった。

スポーツ用品の販売が全般的に低調なうえ、ネット販売との競合が収益を圧迫している。2019年6月期の最終損益は約12億の赤字(前期は19億7900万円の黒字)に転落する見通し。

カシオ計算機は2月12日~3月15日を期間に募集。社員約2900人のうち国内営業部門やスタッフ部門の勤続10年以上で、45歳以上の一般社員と50歳以上の管理職社員が対象。ただ、募集人員は定めていない。同社の場合、足元の業績がとくに悪化しているわけではないが、事業基盤の再構築の一環として人員体制を見直す。

光村印刷は昨秋に買収して子会社化した新村印刷(東京)で約30人の希望退職者を2月18日~3月1日に募った。

協和発酵キリンは3月11日から募集を始めた(28日まで)。4月1日時点で45歳以上勤続5年以上の社員で、生産本部所属社員は除く。募集人員は定めていないが、対象人員は全社員の4割にあたる約1600人。同社は7月に「協和キリン」に社名変更する。

コカ・コーラボトラーズジャパンHD、700人募集

コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(HD)も3月11日~28日の期間で募集中。募集人員は700人程度。グループ社員約1万7000人のうち、勤続1年以上の45歳以上が対象。

4月1日出荷分からコカ・コーラなどの商品(1.5リットル以上のペットボトル商品)を値上げする。値上げは27年ぶりで、物流費高騰や原材料価格の上昇を理由とする。人件費圧縮も推し進めて収益改善につなげる。

ルネサスエレクトロニクスは詳細を発表していないものの、2月初旬の2018年12月期決算説明会で希望退職者を募集する方針を明らかにしている。2014年12月以来で、募集規模は国内中心にグループ社員の約5%にあたる900人程度とみられている。

東京商工リサーチの2018年「主な上場企業の希望・早期退職者募集状況」調査によると、実施企業は2000年の調査開始以来最少の12社となり、前年の25社から半減した。リーマンショック直後の2009年に191社に跳ね上がったが、円安進行で輸出産業を中心に大手企業の業績が好転した2013年(この年は54社)から減少をたどっている。

◎2019年以降:希望退職募集を発表した企業

社名募集規模
<3月>
メガチップス40人程度
<2月>
協和発酵キリン特に定めず
ルネサスエレクトロニクス900人程度(推定)
コカ・コーラボトラーズジャパンHD700人程度
<1月>
アルペン300人程度
光村印刷30人程度(子会社の新村印刷で実施)
カシオ計算機特に定めず

文:M&A Online編集部