新型コロナウイルス感染症の検査キットやワクチン開発が加速してきた。デンカ<4061>は7月20日に、新型コロナウイルス感染症簡易検査キットの体外診断薬としての国内薬事承認を医薬品医療機器総合機構に申請した。 

同キットは短時間で簡易に陽性、陰性を識別できるもので、同社では2021年3月までに最大1日10万検査分の量産体制を整えるという。現在使用しているPCR検査と併用することで、一気に検査能力を高めることができそうだ。 

一方、アンジェス<4563>が6月30日から大阪市立大学医学部附属病院で進めている新型コロナウイルスワクチンの第1相、第2相の臨床試験が7月31日に終了する予定で、8月からは製品化に向けた動きが本格化する見込みだ。 

塩野義製薬<4507>も年内に臨床試験に入る予定のワクチンの生産能力をこれまでの年間1000万人分から同3000万人分に増やすことが伝えられており、動きが加速してきた。 

ただ検査キットの1日10万検査体制が完成しても日本国民全員に行き渡るには3年以上かかる。年間3000万人分のワクチンもやはり日本国民全員に投与するには3年以上かかる。 

国は地方の観光業の活性化などを目的に約1兆7000億円を投じてGoToキャンペーンを実施するが、検査キットやワクチンが行き渡れば、補助がなくても旅行者は増えるはず。 

GoToキャンペーンよりもむしろ、さらなる増産投資に対する国の支援が、地方の観光業の活性化はもちろん日本経済回復の切り札となるかもしれない。 

量産化に必要な国の支援

新型コロナウイルス感染症簡易検査キットはデンカの子会社であるデンカ生研(東京都中央区)が2020年3月に国立感染症研究所と共同研究に着手し、早期の製造販売承認取得を目指している製品。 

デンカ生研は1950年からワクチンや検査試薬の開発を手がけており、インフルエンザの迅速診断キットでは国内トップメーカーだ。 

さらにデンカが2019年に33.4%の株式を取得した台湾PlexBio社でも、新型コロナウイルスなどの有無を測定する検出法を開発中で、台湾で実用化に向けた検証を行うとともに、日本での展開も検討するという。 

アンジェスが手がけるDNAワクチンは新型コロナウイルスのたんぱく質をコードする環状DNA(プラスミド)を接種し、体内で新型コロナウイルスのたんぱく質を生産することで免疫力を付けるもので、病原性を持たないため安全性が高い。 

生産についてはプラスミドDNAの製造技術と製造設備を有するタカラバイオ<4974>が担当しており、細胞内に薬剤を送達する新規投与デバイス技術でダイセル<4202>が参画するなど開発、量産体制は整っており、第1相、第2相の臨床試験が終了したあとの8月以降の動きに注目が集まる。 

塩野義製薬が開発中の新型コロナウイルスワクチンは、2019年に子会社化したUMNファーマ(秋田市)が保有する昆虫細胞などを用いた、たんぱく発現技術を活用したもの。 

年間1000万人分の供給を実現するため、遺伝子組み換えたんぱくワクチンの製造実績を持つアピ(岐阜市)などと共同で国に補助金申請を行っていたが、供給能力を年間3000万人分に引き上げる計画が表面化している。 

現在、新型コロナウイルスの感染者数が増加しており、ワクチンや検査キットの開発、量産化は急務。今後、国がどこまで支援するのか。有効な資金投入が求められる。

文:M&A Online編集部