2016年7月18日に英半導体設計大手のアーム・ホールディングス(ARM)を買収して4年、ソフトバンクグループ<9984>が同社の売却もしくは再上場に向けて動き出している。現在、ARMの企業価値は340億ドル(約3兆6000億円)とみられ、「高すぎる買い物」と呆れられたソフトバンクグループの買収額320億ドル(当時のレートで約3兆3000億円)を上回っている。

ARMの企業価値を押し上げた「二つの好機」

その背景には二つの「幸運」があった。一つは新型コロナウイルス感染症の世界的流行に伴い世界各国で外出の制限もしくは規制がかけられ、インターネット経由のリモート勤務やリモート授業、ビデオ通話などの需要が急増して半導体市場が好調なこと。

そしてもう一つは、米アップルが自社ブランドのパソコン「Macシリーズ」でARMが設計した独自開発CPU「Apple Silicon」へ完全移行すると発表したことだ。米調査会社のNet Applicationsによると、2020年6月時点で世界パソコン市場ではウィンドウズOS(基本ソフト)機のシェアが86.69%と圧倒的に強く、MacOS機のシェアは9.22%と9分の1以下だ。

次期モデルからARM設計の独自CPUを採用する「MacBook Pro」(同社ホームページより)

それでも無視できないのは、MacOS機メーカーはアップル1社しかないこと。一方、ウィンドウズOS機は日本で購入できるメーカーだけでも30社を超える。1社当たりの生産台数でみれば、アップルは超大手なのである。このあたりの事情はスマートフォンでのアンドロイドOS搭載端末とiOSを唯一搭載する「iPhone」の関係と同じだ。つまりアップルのCPUを独占設計できるというのは、ARMの業績に大いにプラスとなる。

この二つの「幸運」がなければ、ARMの企業価値はソフトバンクグループの買収額を上回ることはなかっただろう。中国電子商取引(EC)業界メディアの電商報に「中国EC大手アリババへの投資で運を使い切った」と揶揄されたソフトバンクグループの孫正義会長兼社長だが、どっこい強運は続いている。