経営再建中の曙ブレーキ工業<7238>は信元久隆社長兼会長が退任し、2019年9月27日に開く臨時株主総会で新社長に宮地康弘氏を迎え入れる。宮地氏は1957年5月17日生まれの62歳で、1981年に自動車機器に入社した。

ブレーキビジネスに精通した逸材

この自動車機器は1939年に日本政府が認可した「陸上車輌・航空機・船舶並定置機関ニ対スルヂーゼルエンヂン附属品ノ製造及販売」に関する独ボッシュとの技術援助契約に伴い設立された会社で、翌1940年に東松山工場(埼玉県)で操業を始めている。戦後の1955年になって自動車用制動倍力装置(油圧ブレーキブースター)を分離し、「自動車機器株式会社」として独立した。同社は1999年にボッシュ ブレーキ システムと経営統合している。

宮地氏は2005年にTMDフリクションジャパン社長に就任。同社は15%の世界シェアを持っていたブレーキ摩擦材大手のTMDフリクション・グループ(ルクセンブルク)が2004年に設立した日本法人だ。TMDフリクション・グループは宮地氏が日本法人社長を退任した後の2011年11月に、自動車用ブレーキ摩擦材の世界シェアトップである日清紡ホールディングス<3105>の完全子会社となった。

宮地氏は2009年にボッシュへ戻り執行役員に就任。2010年に同社常務執行役員、2016年に同社専務執行役員を歴任する。2017年には日本電産へ常務執行役員として移籍した。2019年4月1日付で常務執行役員車載事業本部副本部長兼車載事業本部プロジェクト推進統括部長(営業統轄部長)に異動したが、同6月末で同社を退職している。

キャリアからも明らかのように、宮地氏は自動車部品、とりわけブレーキに強い「プロ経営者」だ。社長経験もあり、開発や製造、調達から経理、人事までの幅広い視点で経営にコミットできそうだ。再建を支援する投資ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)はブレーキ事業に深い見識を持ち、国内完成車メーカーとのビジネスの拡大や新規顧客獲得の実績があり、数多くのメーカーと非常に強い人間関係を築いていることを理由に宮地氏を社長に指名した。

株式市場の宮地氏に対する期待も大きい。人事発表があった翌日の2019年8月27日、低迷していた曙ブレーキ工業の株価が反発。午前10時6分には東証1部の値上がり率トップ銘柄となった。市場関係者は「新社長が企業再生に強い日本電産の出身者ということで期待が高まったのではないか」とみている。宮地新社長は曙ブレーキ工業の業績低迷に「ブレーキ」をかけられるのか。自動車業界は固唾(かたず)をのんで見守っている。

文:M&A 0nline編集部