日本企業も注目するNAFTAの「着地点」-米メディアの報道は

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米国とカナダによる北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉は、期限とした2018年8月31日の協議でも合意できず、同9月5日に再協議が開始された。交渉が不調に終われば、両国の一体化した経済圏に亀裂が入ることになる。トヨタ自動車<7203>、ホンダ<7267>など、カナダに生産拠点を置く日本企業にも影響が及ぶおそれが大きい。

NAFTA協議再開、焦点は

同日のニューヨーク・タイムズ紙は、「行きづまりの状況の中で、アメリカがカナダなしに前進できるか、NAFTAから完全撤退するかは不透明」とコメントした。

同紙は再協議の会合の雰囲気について、カナダのクリスティア・フリーランド外務大臣が「両者に善意があり、雰囲気は建設的で肯定的」と語ったと報じた。しかし同日には両国の貿易データが示され、カナダの2018年7月の対米国商品貿易黒字は41億ドルと、2008年以来最大の不均衡に達したことが明らかになった。

トランプ大統領(写真左)とトルドー首相(中央)は再び握手できるか?(Photo by The White House)

一方で同記事は、トランプ米大統領とカナダのジャスティン・トルドー首相の関係が、今年のサミットを引き金として緊張の限界に高まっていると指摘。再協議では、次の点が焦点となると推測した。

1.NAFTA協定第19章。関税やダンピングについて異議申立を可能とする紛争解決処理制度の維持。米国とメキシコとの合意では削除されたが、カナダは米国の誤った判断から自国産業を保護するために必要と主張している。
2.カナダの乳製品保護主義。トランプ首相の攻撃に対し、トルドー首相は、「妥協の余地がある」と柔軟性を見せようとしていると伝えられる。
3.カナダが制限している、文化産業(映画、TVネットワークなど)の外国企業による所有。トルドー首相は、アメリカのメディア企業がカナダのTVネットワーク取得を阻止する文化的措置が、自国の文化保護のためには不可欠だと述べている。

カナダ製品への関税は米国の「自縄自縛」に

ワシントンポスト(2018年8月29日)の「これら3点が米加の貿易交渉を阻害している」では、再協議事項として「鉄・アルミ関税の恒久的免除と、自動車関税の撤回」を挙げつつも、トランプ政権がこれらを取り下げる気配はないと指摘している。

これに対し、同9月2日のニューヨーク・タイムズ紙は「NAFTAについての偽りのディール」で、カナダへの脅しとなっている自動車関税は「シボレー・インパラ」などを現地生産している米ゼネラルモーターズ(GM)の首を絞めることになると指摘。関税で輸入自動車部品が値上がりすれば、米国は20万人の雇用減少にみまわれるだろうと試算し、「愚かな行為だ」と批判した。

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