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【TSR情報】2016年を振り返って

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2016年を振り返って

2016年の企業倒産は引き続き低水準で推移し、年間倒産件数は8年連続で前年を下回ることがほぼ確実になった。2013年3月末で中小企業等金融円滑法が終了以降も、中小企業のリスケ(返済猶予)要請に金融機関が柔軟に対応するなど、積極的な金融支援が倒産抑制に効果をみせた。

2013年4月の量的金融緩和で貸出競争が激化していたが、日銀は2月16日に史上初のマイナス金利を導入した。企業の資金需要が低迷し、国内銀行のうち12行が逆ザヤに陥るなど金融機関は資金運用に苦慮している。この状況を背景に、9月末の貸出金は前年同期比2.2%増と伸びが鈍化する中、不動産業向け貸出は69兆6,698億円(前年同期比7.2%増)と突出し、すでに過熱気味の様相を呈している。

また、4月の熊本地震や8月から9月の度重なる北海道の台風襲来、10月の鳥取県中部地震など自然災害も各方面に被害を及ぼした。世界を見ても、11月の米国次期大統領選でトランプ氏の当選後に為替が乱高下し、11月のOPEC総会では原油の減産に合意した。

様々な出来事が国内外で起きた2016年を振り返った。

倒産は8年連続で減少

2016年の企業倒産は、1-11月累計で7,736件(前年同期比4.6%減)、負債総額は1兆8,344億円(同6.2%増)となった。年間では2015年(8,812件)に続き2年連続の8,000件台で、バブル末期の1990年(6,468件)に次ぐ低水準が見込まれる。

企業倒産がバブル期並みの低水準で推移しているのは、政策支援によるところが大きい。これまでの中小企業支援は「資金繰り支援策」が根幹にあった。その代表例が保証協会を活用した特別保証制度や、2009年12月施行の中小企業等金融円滑化法だろう。

金融円滑化法は返済猶予で中小企業の資金繰りを緩和し、経営再建を支えることを目的にしていた。金融庁によると、地方銀行が借入金の返済猶予など条件変更に応じている取引先は約11万社(2015年9月末現在)。このうち、43%が条件変更から5年以上、21%が4年以上を経過し、安易な条件変更が経営改善につながっていないことを意味している。

今、金融庁は『日本型金融排除』を問題視している。金融機関が不動産担保に依存し、将来性のある企業でも資産がないと融資を受けられない。こうした貸出姿勢から抜け出すには、金融機関が企業の将来性(事業性)を見抜く、「目利き力」を身につけることが必要だ。だが、マニュアル化された業務の中では難しいのも実情だ。これに替わるものが、経済産業省が打ち出した「ローカルベンチマーク」の事業性評価だ。金融庁も「ベンチマーク」として歩調を合わせている。今後は金融機関も否応なしに目利き力を求められ、いかにリスクを負って中小企業への貸出に取り組むか。地域経済の活性化に向けた金融機関の覚悟と姿勢、そして責任を問われることになる。

同時に、経営者も市場性や自社の長所・短所を的確に把握し、アピールしないと生き残れない難しい時代を迎えている。

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