「財界総理」って? 日立から再び「住友」へ

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経済界の総本山「経団連」(東京・大手町)

経団連の主が6月1日に交代する。病気療養中の中西宏明会長(日立製作所前会長、5月12日付で同社相談役)が任期途中で退任し、住友化学会長の十倉雅和氏が緊急登板する。経団連会長は「財界総理」としばしば形容される経済界最高のポスト。十倉氏で15代目となるが、会長を輩出する業界・企業は時代とともに大きく変遷している。

統合後、再度会長を送る住友化学

経団連は略称で、正式名称は「日本経済団体連合会」。2002年に経済団体連合会(旧経団連)と日本経営者団体連盟(旧日経連)が統合して発足した。当時、バブル崩壊後の「失われた10年」の真っ最中。大手銀行の相次ぐ統合でメガバンクが誕生するなど、産業界では再編の動きが慌ただしさを増した。財界も例外ではなかったのだ。

中西氏の後を受けて会長に就く十倉氏は2002年に現経団連が発足して6代目、旧経団連時代から数えて15代目(一覧表)。住友化学からの会長就任は3代前の米倉弘昌氏(2010~14年)に次いで2人目だ。

1つの会社から2人以上の経団連会長を輩出するのは過去に3社しかない。東京芝浦電気(現東芝)、トヨタ自動車が各2人、新日本製鉄(新日鉄住金を経て、現日本製鉄)は実に3人を数える。そこに割って入ったのが住友化学。2002年の現経団連の誕生後に限れば、2人の会長を送り出すのは同社が初となる。

OBから後継、本命不在が露呈

経団連会長は現職の副会長から昇格するのが定石。だが、選ばれた十倉氏は昨年6月に退いた元副会長で、いわばOB組。2018年に就任して2期目の中西会長は任期を1年残していたとはいえ、本命不在が図らずも露呈した形だ。

住友化学は総合化学メーカーの国内2位で、2021年3月期売上高は2兆2869億円。ただ、トップの三菱ケミカルホールディングスとは1兆円近い開きがある。十倉氏はディスプレーや半導体用の電子材料事業の拡大に手腕を発揮し、2011年に住友化学社長(2019年から会長)に就いた。

経団連会長は製造業から選ぶのが習わし。実際、第3代の植村甲午郎(経団連事務局)、第7代の平岩外四(東京電力会長)の2氏以外は製造業だ。

3人の会長を輩出した新日本製鉄

「鉄は国家なり」「鉄は産業のコメ」。今では聞かれなくなったフレーズだが、戦前、戦後の高度成長期を通じて鉄鋼産業の力は国家の力そのものだった。あらゆる産業に基礎素材の鉄を供給して経済を支え、輸出を通して海外情報の最先端に位置していた。すなわち、鉄の利益は国益と合致し、鉄の課題は国家の課題でもあったのだ。かつて新日鉄が3人もの経団連会長を輩出した理由も合点がいくのではないか。

振り返れば、経団連会長が「財界総理」の名にふさわしい存在感を発揮したのは第10代(統合後の初代会長)の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)まで。以降は、出身企業のスケールがそれ以前ほどではなくなったことに加え、会長候補になり得る人材の払底もささやかれるようになったのだ。

もう一つ、三菱、住友、三井といった旧財閥系企業は経団連の会長候補から除外するという不文律があったが、3代前に住友化学の米倉氏が就任。当時は「異例の人事」とされたが、今回再び住友化学にバトンが託され、実質的に形骸化した。

「財界総理」の復権は?

そうした中、久々の「大物会長」との期待を背に登場したのが日立出身の中西氏だった。デジタル技術で社会課題の解決と経済成長の両立を目指す「ソサエティー5.0」を提唱し、デジタル庁創設の素地になった。後継の十倉氏は「中西路線」踏襲を強調している。

経団連会長に求められるリーダー像は時代を映す。未曾有のコロナ禍の教訓を踏まえ、新たな時代の扉をどう開くのか、果敢な発信力と行動力が求められている。

◎歴代の経団連会長(敬称略、社名・役職は就任当時)

名前 出身母体 在任期間
1 石川 一郎 日産化学工業社長 1946~56年
2 石坂 泰三 東京芝浦電気社長 56~68年
3 植村 甲午郎 経団連事務局 68~74年
4 土光 敏夫 東京芝浦電気会長 74~80年
5 稲山 嘉寛 新日本製鉄会長 80~86年
6 斎藤 英四郎 新日本製鉄会長 86~90年
7 平岩 外四 東京電力会長 90~94年
8 豊田 章一郎 トヨタ自動車会長 94~98年
9 今井 敬 新日本製鉄会長 98~2002年
10 奥田 碩 トヨタ自動車会長 02~06年
11 御手洗冨士夫 キヤノン会長 06~10年
12 米倉 弘昌 住友化学会長 10~14年
13 榊原 定征 東レ会長 14~18年
14 中西 宏明 日立製作所会長 18~21年
15 十倉 雅和 住友化学会長 21年~

文:M&A Online編集部

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