スポーツ用品大手、デサントに対する伊藤忠商事の敵対的TOB株式公開買い付け)の成否に注目が集まっている。日本では敵対的TOBそのものが年に1件あるかどうかで、数が限られるが、大手企業同士が争うケースとしては2006年の王子製紙が仕掛けた北越製紙への敵対的TOB以来、13年ぶりだ。

ここ数年の敵対的TOBはいずれも成立だが…

TOBの実施が発表されると、株式の買い付け対象企業の取締役会は10営業日以内に賛成、反対、中立、留保などの意見表明を行わなければならない。大半のケースでは、対象企業の賛同を得て友好的にTOBを行うが、伊藤忠は事前に通告せずに、1月31日にTOBを開始した。

デサントは7日、「伊藤忠の利益を優先した経営がなされる危険がある」として反対を表明、株主に対して買い付けに応じないよう要請した。

では実際、敵対的TOBはどのくらいあるのだろうか。M&A Onlineの集計によると、2018年と2017年が各1件、16年はゼロ、15年が2件。TOB件数は年間50件前後で推移しており、敵対的案件はほんの一握りであることが分かる。ただ、これら4件の敵対的TOBはいずれも成立した。

その顔ぶれをみると(前者が買い手/後者が対象企業)、18年=日本アジアグループ/サンヨーホームズ、17年=実業家の佐々木ベジ氏/ソレキア、15年=旧村上ファンド系のECMマスターファンドSPV/セゾン情報システムズ、テクノグローバル/新華ホールディングス・リミテッド。

もっとも、これら4件はそろって小ぶりの案件。国内大手企業同士となると、2006年の王子製紙・北越製紙の攻防にさかのぼる。いわゆる「北越製紙対王子製紙事件」だ。

北越製紙、王子製紙との経営統合を阻止

製紙トップの王子製紙(現王子ホールディングス)が同業大手の北越製紙(現北越コーポレーション)に対して経営統合を目的に敵対的TOBに踏み切った。北越は三菱商事を引受先とする新株発行を強行するなどして、王子のTOBを阻止したのだ。

過去においては敵対的TOBの多くが失敗している。05年の日本技術開発に対する夢真ホールディングス、06年のオリジン東秀に対するドン・キホーテのTOBは不成立となった。弁当・総菜大手、オリジン東秀のケースでは、イオンが友好的な第三者(ホワイトナイト)となり、オリジン東秀を傘下に収めた。

買収防衛策を日本で初めて発動したブルドックソース

後に「ブルドックソース事件」と呼ばれるようになった日本のM&A史に残る出来事が起きたのは07年夏。

ブルドックソース本社(東京都中央区)

投資ファンドのスティール・パートナーズがブルドックソースに対するTOBを発表したが、ブルドック経営陣は反対。6月の株主総会で導入が承認された買収防衛策を実行に移した。敵対的買収者のスティールの持ち株比率を引き下げるのが目的で、“有事”の買収防衛策発動は日本初だった。スティールは同年、天竜製鋸にもTOBを行ったが、こちらも失敗した。

敵対的買収の成功例では2011年、独立系国内投資ファンドのDRCキャピタルが登山用品店「好日山荘」を運営するコージツを完全子会社したのがそれにあたる。

伊藤忠はデサント株30.44%を保有する筆頭株主TOBで40%まで持ち株比率を高める計画。一方、対抗策としてデサント側は友好的な第三者を獲得してMBO(経営陣による買収)による非公開化も視野に入れているとみられる。敵対的TOBが成立するのか、これを阻むことになるのか。

〇主な敵対的TOB(〇は成功、太字は失敗)

買い手対象企業
2000〇独ベーリンガーインゲルハイムエスエス製薬
2001村上ファンド昭栄
2005夢真ホールディングス日本技術開発
ライブドアニッポン放送
2006ドン・キホーテオリジン東秀
王子製紙北越製紙
2007米スティール・パートナーズブルドックソース
米スティール・パートナーズ天竜製鋸
2011〇DRCキャピタルコージツ
2013米サーベラス西武ホールディングス
2015〇ECMマスターファンドSPVセゾン情報システムズ
〇テクノグローバル新華ホールディングス・リミテッド
2017〇佐々木ベジ氏ソレキア
2018〇日本アジアグループサンヨーホームズ

※社名は当時のもの

文:M&A Online編集部