アパレルにこだわらないM&Aを

-かつてアパレル業界では、ファーストリテイリング<9983>が、活発なM&Aを展開していました。

アパレル業界は内需に留まっていては、遠からず成長も限界が来る。そうした厳しい状況下で、ファーストリテイリングは海外の高級ファッションブランドなどにM&Aを仕掛けたが、それほどうまくいかなかった。理由は互いの企業文化が違ったことだ。

ファーストリテイリングのようなカジュアル衣料ブランドはコストパフォーマンス優先。高級アパレルブランドとは真逆の戦略で、うまく取り込むことができなかった。同社は高級ブランドを手がけるデザイナーを起用したコラボ衣料で話題になっているが、あくまでブランドポジションを上げるための「見せ筋」の商品だ。限定商品であり、経営の屋台骨にはならない。

それでも同社は「勝ち組」といえる。低価格ブランドの「ジーユー(GU)」は国内で伸びている。日本の若年層は同じアパレルで最も価格帯が低いブランドを購入する傾向が強い。勢いがある「アースミュージック&エコロジー(earth music&ecology)」や「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」、「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」などは、それぞれのアパレル企業の廉価版ブランドだ。「GU」を立ち上げたのは正解だった。一方、国内では飽和状態の「ユニクロ」は、中国で伸びている。

-ファーストリテイリングが再び積極的なM&Aを展開する可能性はありそうですか?

中途半端なM&Aはやらないと思う。やるとしたらH&Mクラスの超大型案件だろう。国内アパレル市場に成長余地が乏しいのだから、国内アパレルを買収してもうま味は少ない。海外市場を開拓するなら、大型買収で一気にシェアを固めるのが得策だ。

ファーストリテイリングに限らないが、国内でのM&Aならアパレルにこだわらず事業ポートフォリオを考慮すべきだろう。たとえばファッションと親和性が高いコスメ(化粧品)や健康食品関連の企業を買収して事業の幅を広げる。ITテック系ではウェアラブル端末もアパレルとの親和性が高い。

山田政弘(やまだ・まさひろ)氏 立命館大学経営学部経営学科卒、中央三井信託銀行(現三井住友信託銀行)入行。プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント戦略グループコンサルタント、オーケイウェブ(現オウケイウェイヴ)マーケティングディレクター兼事業開発室長などを経て、ジェミニ ストラテジーグループ社長CEOに就任。一般社団法人日本スタートアップ支援協会の顧問としてベンチャー企業の育成を手がける。主な著書に「数字を使ってしゃべれるようになるトレーニングブック」「エッジ・ワーキング」 など。

取材・文:M&A Online編集部 糸永正行編集委員