「ビルの壁を見るだけで自分のサイズのTシャツを置いている店が分かる」「スマートホン以外の何かが出てくる」「地下街でのナビが可能になる」。KDDI<9433>の経営戦略本部ビジネスインキュベーション推進部の中馬和彦部⾧は、こんな未来予想を披露する。ベンチャー支援プログラムやベンチャー投資ファンドを統括する中馬氏に学生レポーターの山口萌さんがスタートアップ企業の支援策やスマートホンに次ぐ新しい時代について聞いた。

2週間で出資決定

-KDDIは通信会社なのですが、スタートアップ企業の支援に力を入れておられます。どういう経緯で支援を始められたのですか。

「2011年からスタートアップ企業の支援を始めた。2011年はガラ携といわれる携帯電話がスマートホンに代わった節目の年。2011年以前はauをはじめ通信会社がソフトをすべて提供していたが、スマートホンの時代になってからはアップルストアのように携帯電話メーカーがソフトを提供するようになった。それまでは通信会社がイニシアティブを握っていたが、完全に手放す形になった。これではまずいということで、自分たちで新しいサービスを作り出すためにコンテンツやゲームなどのソフトを作っているスタートアップ企業への投資を行うことになった」

-2011年当時と今では支援内容は変わってきていますか。

「初めのころの出資はほとんどがゲームだった。最近スマートホンはコモディティ化(一般化)して大きくは変わらなくなってきたため、アプリがあまりダウンロードされなくなってきた。最近ダウンロードするのは店舗の会員証やポイントカード、決済ツールなどが多い。スマートホンが遊びやコミュニケ―ションのツールから生活の基盤になってきたためで、最近の投資はe学習やホテル、不動産などインターネットと関係なさそうなところが増えてきた」

-出資比率や出資金額はどのような状況ですか。

「我々はファンドなので出資比率は15%までで、金額は15億円までというルールでやっている。社内の経営会議や投資委員会などの承認は必要ないため2週間で決定できる。スタートアップ企業は時間が大事なので、このようにしている。経営権を握りたい時は本体でM&Aをする」

―ファンドとしての目的は何ですか。

「事業シナジーを求めている。リターンも必要だが、極端な言い方をすると採算割れしなければ、最終的に協業事業が作れればいい。新しい技術を先行的に確保できればいいという考え方だ」

-スタートアップ企業の問題点は何でしょうか。

「日本のスタートアップ企業への投資は北米の10分の1から20分の1しかない。米国のグーグルやフェイスブックなどはスタートアップ企業だったが、今や日本の大企業よりも時価総額が大きい。日本ではこうした企業が極めて少ない。時価総額1000億円以上のユニコーンと言われる企業が育ってないことが課題ではないだろうか」