「工都」と呼ばれ、戦後の高度成長を牽引してきたモノづくりの街として知られる川崎。その川崎を舞台に「工場夜景」の一大ブームが起きた。観光とは無縁と思われていた川崎が産業観光のモデル都市として全国的な注目を集めて早10年になろうとしている。

少子高齢化や産業構造の変革が進む中、地域活力をどう保持・育成していくのか。川崎工場夜景の“仕掛け人”である亀山安之さん(川崎市観光協会 産業観光プロデューサー&ツアーディレクター)に、産業観光の魅力や可能性について聞いた。

年間7万人を集客

ー川崎発の工場夜景は産業観光を代表するメニューとして、すっかり定着した感があります。ツアーの定期化から10年目を迎え、現状はどうなのでしょうか。

工場夜景を船から楽しむクルーズのツアーだけで年間5万人が訪れている。バスツアーも毎回すぐに予約で埋まるほどだ。クルーズとバスを合わせて年間ツアー客はざっと7万人をキープしている。実際、リピーターも多く、工場夜景自体、観光資源としてかなり定着したと思う。

一方で、供給過剰の面も出てきている。全体のパイ(市場)はそんなに変わっていないが、ツアーの主催会社が多くなったので、その分、1社あたりの集客人数は低下傾向にある。初めの頃はクルーズでも1~2社だったが、今では横浜から出港するツアーだけで5社以上。週末だけでなく、平日を含めていつでも参加できる状況にある。その意味では、10年もよく持っているなという率直な気持ちもある。

ーご自身、ブームの“仕掛け人”です。

工場夜景の魅力は自分が見出だしたものではない。マニアをはじめ、ファンがもともといた。自分の役回りはいわば育ての親。産業観光の一つのメニューとして、ツアー化という形で観光資源化した先駆けが私だった。

近年注目される産業観光だが、そのフィールドは第一次産業から第三次産業まである。決してモノづくりだけではない。農業でもいい。工場地帯に代表される川崎の場合、工場の観光資源化のほかに切り口は考えられない。工場見学をはじめとする産業観光は昼間に行われていたが、参加者の制約もあり、マーケットとしては限られていた。

そこで昼間とは別に工場夜景のツアーを企画したところ、予想以上の人気を集めた。ブームを初めから確信していたわけではなかったが、結果は大当たりだった。夜景好きの女性の心をとらえたことも大きかったかもしれない。

モノづくりの歴史をたどる意味合いも

ー工場夜景の魅力とは。

夜景でみる工場の明かりは決して観光のためにつけられているわけではない。工場の操業のために最低限必要な節約された明かりでしかない。それがあんなにもきれいに見える意外性。そこが大きな魅力だと思う。

美しいだけでなく、その奥には日本が積み重ねてきたモノづくりの歴史や伝統、即ち、今日の日本の経済成長を育んできた一つの糧といったものを感じてもらえるはずだ。

どう見せるかというストーリー性やクライマックスも観光の継続のためには大事。場合によっては音楽も流す。演出や楽しませ方の工夫で工場夜景の感動をさらに広げられる。

川崎の「工場夜景」