M&Aや国際取引に関して国税当局から巨額の申告漏れを指摘(否認事案)されるケースが増えている。なぜ否認事案が増えるのか。企業はどのように対処すればよいのか。東京国税局で国際調査審理官として執務経験を持つ森・濱田松本法律事務所の小山浩弁護士に国税当局による税務調査の方針や企業が取り組むべき対策などについて聞いた。

税務調査の可能性高い海外企業買収

-M&Aや国際取引に関して巨額の否認事案が増えているとのことですが、具体的な事例をお教え下さい。   

「守秘義務の観点から、公表された情報のみに基づいてお話しすると、今年になって報道されたものだけでも3件の巨額の否認事案があった。一つは4月に大手携帯電話会社が過去に買収した米国企業が、タックスヘイブンに子会社を保有していたため、タックスヘイブン対策税制を適応され、939億円の申告漏れを指摘された」

「6月にはオフィス向けコーヒーの販売会社がグループ企業の再編時に、繰越欠損金の引き継ぎについて経済合理性がなく、租税回避が目的であったとして100億円の申告漏れを指摘された」

「さらについ最近9月に大手家電メーカーが米国の子会社の株式をオランダの子会社に譲渡した際に、金額が低額であり、オランダ子会社への寄付金に当たるとして421億円の申告漏れを指摘された例などがある」

「このように株を動かしたり組織再編する際に、最近課税される問題がクローズアップされている」

-なぜこのような問題が起こっているのですか。

「組織再編税制が平成13年にできた。組織再編やクロスボーダーのM&Aは難しい取引であり複雑なので、税務当局にとってもハードルが高ったのではないか。それが大手検索サービス会社に対する最高裁判決が出て、組織再編に関する包括的な否認規定の判断基準が明確になったり、M&A に対する理解が進んできたことなどから、国税当局がM&Aや組織再編などの複雑で巨額な取引事案にも真剣に取り組もうということなってきたのではないか」