ダークヒーロー、ハゲタカ・鷲津政彦が帰ってきた。首都電力の買収を仕掛けようとした矢先に、東北を大地震が襲い、原発が電源喪失に陥る。国家的危機に直面し、なお買収に突き進む鷲津の思惑とは。ハゲタカシリーズの最新作『シンドローム』(講談社刊)は「3.11」を舞台に物語が進行する。真山仁さんに、著書を語ってもらった。

「3.11」は経済事件として“マスト”のテーマ

-本書は『ハゲタカ』シリーズの5作目。読者が待ち望んでいたのではないですか。

原発を含めたエネルギーの問題や東日本大震災といった、「ハゲタカ」シリーズ以外で小説のテーマとしてきたことが期せずしてこの作品である種の集大成をなしている。

雑誌連載中(週刊ダイヤモンド、2015年11月~2018年2月)も毎号の読者アンケートで多くの特集記事があるにもかかわらず、常に上位に入っていたので、何か読者に響くところがあるのかな、と思っていた。

今回の単行本はハゲタカシリーズとして前作『グリード』(2013年)から5年空いていた。本当なら、忘れられてもおかしくないが、この数年に出したどの著作よりも(発売後の)反応が良い。待っていてくれた読者の存在が本当にありがたいという気持ちでいっぱいだ。

ハゲタカの視点から別のことが見えてくる

-東北を襲った未曾有の地震、原発事故、電力危機……。国家存亡の危機に遭遇した「3.11」を題材にした理由は。

いわば、マスト(must)のテーマ。国家的大惨事であると同時に、比肩するものがないくらいの経済事件であったからだ。

当初、地震や原発事故がM&A(合併・買収)とどういう関係があるのかと怪訝に思われたかもしれない。実際問題として、事故を起こした東京電力(現東京電力ホールディングス)は経営的にいつ破綻してもおかしくない状況にあった。首都圏という日本の心臓部に電力供給を担う会社が倒れてしまえば、バブル崩壊やリーマンショックを超える経済パニックを引き起こす。

そうした国家的危機の中で、“ハゲタカ”ならどう行動するだろうか。企業買収に善も悪もない。世間がどう言うかは別にして、儲かる企業だから買う。これがハゲタカの身上。事故対応をめぐる官邸の迷走、被災地の復興、電力は国家とまで言われる業界構造、実質的に国有化された東電処理のあり方などについて様々な議論がなされているが、ハゲタカの視点で書けば、別のことが見えてくるはずだと考えた。

著書を語る真山さん(東京都内の事務所で)