中堅・中小企業の経営者や幹部層を対象に、組織運営のコンサルティング業務を手がける識学<7049>が勢いづいている。「識学」と名づけた独自のマネジメント理論を引っ提げて、会社を設立して4年。早くも今年2月に東証マザースに上場を果たした。M&A領域にも参入し、組織デューデリジェンス(DD)という新機軸を打ち出した。「識学」の可能性や今後の成長戦略を、安藤広大社長に聞いた。

「識学」メソッド、導入企業は1000社を突破

ー上場前と上場後でどういう変化がありましたか。

最も変わったのは採用面。求人の応募が明らかに増えている。ありがたいことに、採用に困らなくなった。私自身の働き方も大きく変わった。IR(投資家向け広報)活動が増えたし、企業成長の手段の一つとしてM&Aのことに従来以上に意識が向かうようになった。

ーそれにしても、2015年3月に会社設立から4年でのスピード上場です。

「識学」という組織マネジメント理論を広めることが最大の目的で、上場がその機会となると考えた。識学はこれまで世の中になかった考えた方。どういう学術論文に基づいているのかなどと聞かれることが多いが、学術とは関係なく独自で編み出したもの。それだけに、上場によって社会性を獲得できる意味は大きかった。

識学メソッドの導入社数はこの3月末に累計1000社を超えた。学術の裏付けを持つわけでもないのに、どうして信頼を獲得できたのかというと、顧客企業での実績。顧客企業において識学を実践して業績改善につなげているからだ。

また、当社自らも識学どおりに組織運営すれば、4年で上場が可能なことを証明したかった。常に、識学に基づく組織運営の見本となる会社として当社があるべきと考えている。

部下のモチベーションを上げることが上司の役割?

ー「識学」とはどのような理論なのですか。

識学とは、人が物事を認識し行動に移るまでの思考の働き(意識構造)に着目した独自理論をベースにしている。物事を正しく認識できれば正しく行動できるが、認識を誤れば行動を誤る。その認識の誤りが「誤解」とか「錯覚」を生む。

リーダーは組織の成果を最大化するのが責務だが、誤解や錯覚があると、部下の行動を阻害したり、誤った行動を誘発するなど組織パフォーマンスに悪影響を与えてしまう。そうした誤解や錯覚を組織に発生させないために、どういうマネジメントをすればいいのかをロジック化したのが識学だ。

ー誤解や錯覚の例を挙げると。

例えば、部下のモチベーションを上げることは上司の役割なのかどうか。答えは「ノー」だ。

上司が部下のモチベーションを上げるのが自分の役割だと考え、マネジメントすると、組織内にどんな誤解や錯覚が生まれるのか。部下はモチベーションを上げてもらえれば頑張れるが、そうでなければ頑張らなくていいという勘違いを起こす。

本来は上司にそうしたことを期待しなくても成果を上げられる人が評価されるはず。いちいちモチベーションを上げてもらわないと頑張れない存在であれば、本人も不幸だし、会社も無駄な時間を費やさなくてはならず、生産性が低くなる。

上司の役割はまず、部下がどういう位置(立場)にいて、どのような結果を求められている存在なのか、その事実をしっかり認識させることにある。