M&Aが企業規模の大小を問わず急速に広がっている。不足する経営資源や新たな市場を獲得するための手段であると同時に、中小企業の後継者難に伴う事業承継問題を解決するうえでM&Aの活用が活発化して久しい。こうした中、弁理士の立場からM&A業務に本格的に進出する動きが出てきた。大手化学メーカー出身で、弁理士事務所「Office IP Edge」(東京都大田区)代表の原田正純さんに、狙いや成算を聞いた。

M&Aアドバイザー業務に進出

ーM&Aというと、同じ「士業」でも弁護士や会計士を思い浮かべがちですが、弁理士の役割や出番はどのあたりにあるのでしょうか。

M&A取引において、買い手側が特許など知的財産を評価する際、通常、事業と知財を一体として考える場合が多い。大きなM&A案件で、知財そのものの金銭価値を算定することはあるが、そうしたニーズは限られる。あったとしても弁理士が必ずしも関与するわけではない。

一般的にいえば、われわれ弁理士や特許事務所がM&A取引で積極的に携わることはあまりない。これが実態ではないか。

ーそうした中、弁理士としてM&Aの“看板”を掲げているのが原田さんですが。

M&Aアドバイザー業務と知財を中心とした中小企業の経営コンサルティングが2本柱。近年はM&Aアドバイザー業務に力を入れている。

中小企業の事業承継が社会的な課題となっているが、なかでも製造業など技術の知見が求められる企業同士のマッチングがうまくいかないケースが少なくない。当事務所は特許情報を活用して製造業やIT系企業のマッチングの行うことを強みとしている。事業拡大などのために積極的に買収を検討する企業に、買収候補となる企業を提案している。

初めはマッチングのところだけをやるつもりだったが、今ではアドバイザー業務に進出し、M&Aの成立に向けた様々なプロセスに直に携わっている。私自身、昨年、M&Aスペシャリストの資格(日本経営管理協会認定)を取得した。小規模の案件であれば、デューデリジェンス資産査定)もそんなに複雑ではないし、一般的な教科書レベルで実施したうえで、財務的な部分は税理士に任せて差し支えない。

マッチングに技術系の強みを生かす

ーM&Aに着目したきっかけは何ですか。

弁理士の資格をとりたいと思ったのは20代の頃。いずれ独立できればと漠然と考えていた。いざ独立(2013年)する際は、弁理士の専業でないところで何かできないかと考えていた。だから、特許出願の代理といった本来業務は一切やっていない。実はM&Aについても当初、まったく頭の中になかった。

たまたまM&A業界の人と話をしていて、製造業の案件をどのようにマッチングしているのかに興味を持ったことがきっかけとなった。M&A業界は圧倒的に文系出身が多く、技術に詳しくない。とくに製造業でもニッチな分野だと、まず買収対象をどう探していいのか見当がつかない。当の仲介業者にしても手持ちのリストから候補相手を見つけようとしているだけで、積極的、能動的に相手を探せていない。それならば、技術系の私がマッチングの部分で何らかの貢献ができるのではないかと考えた。