米国には営業前のLTSE(ロングターム証券取引所)を含め23もの証券取引所がある。MEMX(メンバーズエクスチェンジ)など認可待ちの取引所もあり、さらに増える見通しだ。
ロングターム証券取引所やメンバーズエクスチェンジとはどのような取引所なのか。アメリカの証券取引所に詳しいLINE株式会社法務室長の山本雅道氏に最新の米国事情をお聞きした。
米国に取引所が多いのは投資家にいい環境を作るため
-米国の証券市場から撤退する企業が多いようですが、どのような状況なのでしょうか。
日本企業は主にニューヨーク証券取引所とナスダックに上場していますが、上場を取りやめる企業もあります。それぞれの企業の事情があるとは思いますが、一つの理由としてはベネフィットとコストが合致しないことが考えられます。
-ベネフィットとコストとは具体的にはどのような内容ですか。
ベネフィットとは例えば、アメリカで実際に事業をやるのであれば、上場によって知名度やブランドイメージ、信頼性などが上がります。事業を行わなくても、グローバルに展開している企業イメージやアメリカでビジネスをする際の下地を作るといったことも考えられます。

主なコストには、開示に関する費用をはじめとした、証券取引法など様々な米国法のコンプライアンスコストが挙げられます。例えば、アメリカでは日本の有価証券報告書に当たる20-F(トゥエンティエフ)だとか、日本の臨時報告書に当たる6-K(シックスケイ)などをSEC(米国証券取引委員会)に提出する必要があります。
これらはただ日本語の報告書を英訳すればよいというものではなく、アメリカの法律に照らし合わせてチェックする必要があります。こうしたベネフィットとコストが合わなくなっていることが、上場を取りやめる理由になり得ます。
-米国には多くの証券取引所がありますね。
SECのホームページを見ますと、2015年に18だった取引所が2018年には23になっています。23の中にはグループ会社として何カ所か持っている企業があったり、証券取引所として登録していますが、実際は先物取引だけを行っているようなところもあったりします。
報道によるとロングターム証券取引所は14番目の認可というような表記もあります。いずれにしても数多くあるのは間違いなく、登録ということでは23ということになります。
-今後も増える見通しですが、なぜこんなに取引所が多いのでしょうか。
基本的な考え方として取引所がたくさんできれば、そこで競争が生まれ、投資家にとっていい環境ができ、市場が健全になるからということのようです。