■ 3.監査法人による結論不表明

その後、東芝とPwCあらた監査法人の関係が急激に悪化していきます。
四半期決算については、監査より簡易な「レビュー」が実施されますが、2016年12月の第3四半期決算のレビューがいつまでも終わることがなかったのです。

ウェスチングハウスの内部管理をめぐる不正があったことから、PwCあらた監査法人は調査する必要があるとし、東芝は2016年12月までの第3四半期決算の公表が出来なくなりました。結局2ヶ月遅れの4月11日にこれを公表しましたが、PwCあらた監査法人は、この四半期決算に対してレビューの結論を表明しないことにしたのです。

監査法人が「結論不表明」としたのは、東芝がこの四半期決算において、原子力事業ののれんの減損をしなかったからではありません。東芝は、原子力事業に関して7,166億円の減損を計上しています。監査法人はその妥当性の検証ができないという理由で結論不表明としたのでした。

■ 4.S&Wの買収と減損処理

ウェスチングハウス買収時ののれんは6,600億円でした。そのうち2016年3月期で2,476億円の減損が計上されています。7000億円を超える減損の対象となるのれんが、そもそもありませんでした。これはどういうことなのでしょうか?

ウェスチングハウスは、S&W(CB&Iストーン・アンド・ウェブスター)を2015年12月に買収しました。S&W買収時に評価した企業価値は、実はもっと低かったことが、今頃になって分かったので、高く買ってしまった金額をのれんに計上し、同時に全額減損したと東芝は公表しています。

これは、かなりおかしな話です。S&Wを買収したのは、2015年12月ですので、2016年3月期での減損テストはどうなっていたのでしょうか。この決算は、新日本監査法人の最後の監査対象となり、PwCあらた監査法人も期首残高として検証対象としていたはずです。

実は、S&Wは原発の建設工事会社で、ウェスチングハウスと一緒に共同プロジェクトを実施していました。S&Wの原発プロジェクトがどんな状態なのか、ウェスチングハウスが知らないはずはありません。東芝が、S&Wの買収によって、今後はプロジェクト全体を一元管理することができ、さらにS&Wと原発工事のコスト負担を巡る対立を解消することができたと発表しています。

結果として、PwCあらた監査法人は、S&Wの買収を原因とした減損という爆弾があるのを知らずに新日本監査法人から監査を引き継いだということなのでしょうか。東芝やウェスチングハウスがその事実を隠していたとしか考えられません。