ウィワークの失敗から学んだ?

つまり、ソフトバンクグループにとってワイヤーカードの破綻は、投資先の選定に問題があったのは間違いないだけに「プラスになった」とまでは言えないにせよ、金融エンジニアリングを駆使してリスクヘッジした結果「マイナスを招かずに済んだ」ことになる。

ソフトバンクグループがウィワークの失敗を受けて、ワイヤーカードでは前もって「手を打った」可能性もありそうだ。そうだとすれば、ソフトバンクグループのファンドスキルは大幅に向上したことになる。

だが、したたかなのはソフトバンクグループだけではない。欧米のヘッジファンド10社がワイヤーカード株の空売りで、総額15億ユーロ(約1800億円)の利益を得たと伝えられているのだ。利益としてはクレディ・スイスの仕組み株よりも、はるかに大きい。

6月11日には1株104.5ユーロ(約1万2500円)だったワイヤーカード株は、書類上に記載されていた多額の現金が行方不明と判明した18日に同2.5ユーロ(約300円)に暴落した。

仮に11日の株価で18日決済の空売りを設定していれば、ヘッジファンドは株式市場から2.5ユーロの現物株を買って104.5ユーロで引き取ってもらえることになり、1株当たり102ユーロ(約1万2000円)の含み益を得ることができる。

判明しているだけでも米コーチュー・マネジメントが2億7100万ユーロ(約325億円)、英TCIは1億7360万ユーロ(約208億円)、英マーシャル・ウェイスは1億4650万ユーロ(約175億円)、英グリーンベールは1億1010万ユーロ(約132億円)の利益を得たとみられる。

こうしたファンドの他にも、ワイヤーカードの経営破綻前に多くの投資家が同社株の空売りを仕掛けていたという。つまり、彼らは同社株の暴落を予想していたことになる。

2019年1月にはワイヤーカードの不正会計疑惑が報じられ、同社株が一時13%以上も下落したこともあった。一部投資家の間でワイヤーカード株は「不正により暴落する銘柄」と見られていたようだ。

クレディ・スイスの仕組債もワイヤーカードの不正リスクを織り込んだ上での発行だったのかもしれない。投資家にとってリスクは損失だけでなく、利益を生むチャンスでもある。ワイヤーカードの破綻劇は、そうした「教訓」を改めて印象づけた。

文:M&A Online編集部