日産自動車<7201>が2019年9月9日、西川廣人社長兼CEOが同16日付で辞任すると発表した。当面は山内康裕最高執行責任者(COO)が暫定的にCEOを代行し、10月末までに指名委員会が次期社長を選ぶ。

西川社長、ついに辞任へ

西川社長が2013年に日産株の上昇を受けて株価連動型報酬制度であるストック・アプリシエーション権(SAR)の行使日を約1週間遅らせ、本来の行使日よりも4700万円多く報酬を受け取ったことが日産の社内調査で確認された。西川社長もこれを認め「しかるべき金額は返納する」と発言している。

しかし、SAR問題は当の西川社長がカルロス・ゴーン前会長を告発した際の「材料」にしたもので、社内外からの批判が噴出。ついには辞任に追い込まれた。が、問題はこの後だ。今後の社長人事で注目すべきことを、2つばかり指摘しておきたい。

ゴーン前会長を告発した不正報酬問題が、今度は西川社長に降りかかった(同社ホームページより)

1. 辞任を渋った西川社長の影響力は残るか?

西川社長はギリギリまで辞任に抵抗していたという。発表の前週には、日産の監査委員会が「西川社長に不正の意図がなく、法的にも問題がないのに責めるのは酷だ」と残留に向けて調整していたという。

それがわずか数日で一転した。水面下での「権力争い」があったことは間違いない。背景には2019年7月から日産の指名委員会で始まった次期社長選びがあったとみられる。

西川社長は後継者選びについて「思い切って若返りを図りたいが、それを阻止しようとする役員がいる」と不平をもらしていたとの報道もある。西川社長の言葉通りに受け取れば、若返りを拒む古参役員が抜本的な日産改革にブレーキをかけているということだ。

半面、西川社長が退任後も日産社内に影響力を残すためには、若手から後任者を抜擢した方が御しやすかったのではないかとの見方もある。つまり西川社長が主張する「若返り」を「院政への布石」と見た社内勢力が、西川社長を辞任に追い込んだというわけだ。自ら職を辞そうとしない西川社長に業を煮やした取締役会が辞任を要請し、了承させた。

今回の辞任劇の「裏側」はまだ見えない。ただ、後継者が誰になるかで、退任後の西川社長の日産社内での「影響力」も決まる。西川社長と3歳も離れていない山内CEO代行がそのまま社長に横滑りすれば、影響力は完全に失われる。

一方、西川社長を「切った」経営陣の期待に反して思い切った若返りが実現すれば、わずかながらにせよ影響力が残る可能性はあるだろう。