保釈中だった前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が逃亡先に選んだのがレバノン。世界的な注目を集めた8日の記者会見では手ぶり身振りのゴーン節でまくし立てた。ただ、日本の司法制度の後進性や日産経営陣を痛烈に批判し、身の潔白を主張したものの、映画も顔負けの逃亡劇についてはほとんど語らずじまいだった。

ゴーン被告が“自由”の身を求めたレバノンとは、どんな国なのだろうか。

1943年にフランスから独立

レバノンは国の西側が地中海に面し、シリアとイスラエルに隣接する。広さは1万452平方メートルで、日本いえば、7番目の面積を持つ岐阜県とほぼ同じ。人口約610万人は千葉県と同程度。1943年にフランスから独立した。

ゴーン被告はブラジルに生まれたが、中等教育を受けたのは両親の母国であるレバノン。その後、旧宗主国のフランスでグランゼコールと呼ばれる理工系エリート養成校の一つ、パリ高等鉱業学校に学んだ。同被告がフランス、レバノン、ブラジルの3カ国の国籍、すなわちパスポートを持つ理由がここにある。

ゴーン被告が記者会見を開いた首都ベイルートは歴史的に地中海貿易の中継港として栄え、中東の金融・商業センターの役割を担ってきた。また、その美しい街並みから「中東のパリ」と呼ばれた。

イスラム教徒とキリスト教徒の内戦を経験

しかし、1975年から1990年までの15年間、イスラム教徒とキリスト教徒による内戦を経験し、国力の低下を招き、なお復興途上にある。2011年から続くシリア紛争のレバノンへの波及を防ぐことにも腐心している。

レバノンには18の宗派があるが、政治的バランスに配慮し、現在は大統領がキリスト教マロン派、首相がイスラム教スンニ派、国会議長がイスラム教シーア派から選ばれる形が定着している。

さて、日本との関係はどうか。日本は1954年にベイルートに、レバノンはその3年後の1957年に東京に公使館をそれぞれ開設。1959年にそろって大使館に昇格した。日本からの主な輸出品は自動車、電気製品。レバノンからは卑金属(鉄、銅、鉛、亜鉛などを指す)などが輸入されている。

レバノン在住の日本人は100人ほど

外務省のホームページによると、在レバノンの日本人は104人(2017年10月現在)、在日レバノン人は207人(2018年12月現在)。野菜を主体としたヘルシーさで知られるレバノン料理は日本でもファンが多い。

レバノンから首相、閣僚の訪日は過去に幾度かあるが、日本の首相がレバノンを訪れたことはなく、閣僚では唯一、高村正彦外相が1999年に同国を訪問した。現在、古屋圭司衆院議員(元国家公安委員会委員長、内閣特命担当相)が日本レバノン友好議員連盟の会長を務める。

ゴーン被告は1999年に、フランスのルノーから送り込まれ、窮地の日産を再生し、豪腕経営者とうたわれてきた人物。日本政府は不法出国した同被告の身柄の引き渡しをレバノン当局に求めていく構えだが、事の次第では今回の「逃亡劇」が両国関係に思わぬ影響を及ぼしかねない。

文:M&A Online編集部