ビズサプリの辻です。

起こっていないことに対する「備え」はどうしても後回りになってしまう、これは自然災害だけでなく企業不正・不祥事という企業にとっての危機においても同様です。

1.不正が生じた後の調査業務

企業内で不正・不祥事が生じ、それが発覚した場合には、企業は「不正調査」を実施します。「不正調査」の主な目的は下記の通りです。

・事実関係の解明
・会社損害等の影響額の算定
・直接的な原因の把握
・直接的な原因を引き起こした背景(根本的要因)の把握

「不正調査」の結果は、通常は「調査報告書」という形で文書として取り纏めを実施します。「調査報告書」は、上記の目的に対する結果のみならず、調査の手法や再発防止策等も含めて記載することが一般的です。そして、速やかなディスクローズが求められることもあり、これらの調査や調査報告書の取り纏めといったことを極めて短期間に対応する必要があります。

この「調査報告書」をもとに処分の社内決裁や、監査法人に対する説明、外部へのディスクローズ等を実施していうことになるためかなり詳細な記載が求められることも多く、そのための調査にも膨大な工数(コスト)がかかります。

この膨大な工数は、通常の事業活動とは異なり、企業価値向上のためといった前向きな要素はほぼゼロです。会社の仲間が起こした不正・不祥事を調査することは精神的にも大変厳しいものです。

膨大な工数(コスト)をかけて精神的にも肉体的にも厳しい業務を大変短期間で実施するという業務は、実際に調査業務に携わったことのある方であれば、まさに「嵐の中の日々」という実感ではないでしょうか。

2.不正調査という嵐の中で

そのような嵐の中に身を置くと、不正・不祥事リスクに対する感度が非常に高くなります。「このような怒涛の日々を送るよりは、リスクが顕在化することがないよう不正・不祥事の予防をしておけばよかった。」と思うことになります。

今回の災害と同様です。電柱が強風で折れてしまい、そしてその折れてしまった電柱に倒木でなかなかたどり着けないといった状況になると「電柱の耐風化」「電柱の地中化」といった提案が出て、それが真剣に議論されるようになるのと同様です。

不正調査に携わった人は、
「なぜそのようなことが実施されてしまったのか」
「なぜ、もう少し早く見つけてあげることができなかったのか」
「突き詰めると何が問題だったのか」
といったことを深く考えざるをえない状況となります。

そこまで深く考えた方から行われる提案は非常に重要で本質的です。ただ、嵐が過ぎるとそのような本質的な提案は非常に手間とコストと時間がかかることが多いこともあり、直接的な要因に対する対応のみを実施して終了してしまうところも多くあるように思います。

「ピンチはチャンス」、不正・不祥事が生じた後は、根本要因まで含めて改善を図り、自浄作用を発揮していくこと、より健全な組織となっていきます。

この点、上場企業の不祥事対応の原則を示した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」では、「再発防止策は、根本的な原因に即した実効性の高い方策とし、迅速かつ着実に実行する。この際、組織の変更や社内規則の改訂等にとどまらず、再発防止策の本旨が日々の業務運営等に具体的に反映されることが重要であり、その目的に沿って運用され、定着しているかを十分に検証する。」と規定されています。