(3)「かっこいいクルマ」をつくりたいから

豊田社長は「かっこいいクルマ」が大好きだ。2016年にトヨタのトップセールスカーである「プリウス」(第4世代)を「ずっと『カッコ悪い』と言っている」と公言するなど、デザインにもこだわっている。豊田社長自身がカーレースに参戦していることもあり、売り上げや利益に対する貢献が小さいためスポーツタイプのクルマがトヨタ社内で評価されないことにも不満だ。

豊田社長は2015年に「もっといいクルマづくり」を打ち出したが、その方向性に合うのが今回増資したスバルや2017年に出資したマツダのクルマづくりだ。この両社、実は豊田社長の言う「もっといいクルマづくり」で復活した歴史がある。

スバルは独ポルシェと同じ水平対向エンジンと4輪駆動(4WD)で独自のクルマづくりを続けていたが、長らく鳴かず飛ばずの状況が続いた。転機となったのが1993年に発売した「レガシィ」(第2世代)の大ヒットだ。

内外装のデザインにはメルセデス・ベンツのチーフデザイナーだったオリビエ・ブーレイ氏が手がけ、高級感を演出した。それまでは「商用車」として一般ユーザーには見向きもされなかったステーションワゴンを人気ジャンルに押し上げた。一方、スバルの4WD車は2014年までは世界ラリー選手権(WRC)の常連で、レースでも実績を残している。

現行のSUBARU「レガシィ アウトバック」(同社ホームページより)

マツダも世界で唯一のロータリーエンジン車の量産メーカー(現在は生産停止中)で、デザインにも力を入れていたが、バブル期を除いて大きなヒットに恵まれなかった。それどころがバブル崩壊で経営危機に陥り、米フォード・モーターの傘下に入る。

フォードから派遣された外国人3代目社長のマーク・フィールズ氏(後にフォードCEOに就任)が、それまで車種ごとにバラバラだったデザインを統一し、メーカーブランド主導のデザイン戦略に刷新。「9割の消費者にソッポを向かれても、1割のファンに売れれば良い」という割り切ったスポーティーなクルマづくりで業績が安定するようになった。

フィールズ元社長は一目みればマツダ車と分かる「メーカーブランドデザイン」に統一した。(同社ホームページより)

この2社への増・出資は豊田社長の目指す「もっといいクルマづくり」への布石と考えられる。両社との関係を深めることでトヨタのクルマづくりを変えるだけでなく、いずれはスバルとマツダをトヨタグループの「独立色が強いスポーツカーメーカー」として傘下に入れる可能性がありそうだ。

一方、スズキへの出資は豊田社長の実父である豊田章一郎名誉会長と鈴木修スズキ会長の個人的な関係によるところが大きいと言われている。

文:M&A Online編集部