マツダ最初のEVにふさわしいのは「ロードスター」

「MX-30」がトヨタ自動車<7203>やデンソー<6902>などと立ち上げた合弁会社のEV C.A. Spiritによる共同開発モデルならともかく、マツダの独自開発モデルであることも問題だ。マツダ1社で販売するため、スケールメリットは期待できない。今のマツダに「中途半端」なEVを量産する余裕などないはずだ。

マツダが最初に世に問うべきは、2シーター(座席)オープンカー「ロードスター」のEVバージョンだろう。同車は世界で最も成功している2シーターオープンカーであり、日米欧で熱烈なファンが存在する名車。「ロードスター」のEVバージョンを発売すれば、インパクトは大きい。マツダが電動化に踏み出すことを大々的にPRし、ブランドイメージを一新するには最も効果的なモデルなのだ。

しかも「ロードスター」のEV化には、「MX-30」にないメリットがある。第1に価格だ。「ロードスター」のような趣味性の高いスポーツカーでは、価格が高くてもファンは飛びつく。「MX-30」の約410万円という価格も、電動スポーツカーであれば割高感はない。米テスラのオープンカー「ROADSTER」の予定価格は、ベースモデルで2270万円もする。

第2に走行距離だ。200kmは「MX-30」のような遠乗りで使うSUVでは明らかに短すぎるが、街乗りが中心のスポーツカーの場合は十分ではないにせよ我慢できないほどではない。第3に電気モーターの特性だ。電気モーターは内燃機関のエンジンに比べると、同馬力ならばトルクが圧倒的に強い。スピードよりも運転の機敏さを楽しむ「ロードスター」向きのパワー特性といえる。

EVに最もふさわしいマツダ車は「ロードスター」だ(同社ホームページより)

「MX-30」を担当した竹内都美子主査は「発売から30年経ってもなお愛され続けるロードスターのように、MX-30と共に過ごす時間をより人間らしく心豊かで楽しい時間にしたい」と、開発に当たって「ロードスター」を意識したことを明らかにしている。ならば、なぜ「ロードスター」のEVバージョンを投入しなかったのか。

売れ筋のSUVならばEV C.A. Spiritの共同開発車として生産することで、販売増や開発コストの相互負担によるコストダウンも可能だったはず。「MX-30」の本命であるシリーズHV投入前の「露払い」としてEVバージョンを出したとすれば明らかに判断ミスだ。中途半端なEVで「MX-30」が不人気車になれば、シリーズHVがその悪いイメージに足を引っ張られかねない。マツダの電動化戦略が冒頭からつまずかないことを祈るばかりだ。

文:M&A Online編集部