東南アジアで超小型電気自動車(EV)ブームを起こしている日本企業がある。トヨタ自動車<7203>や日産自動車<7201>、ホンダ<7267>といった大手乗用車メーカーではない。スズキ<7269>やダイハツ工業などの軽自動車メーカーでもない。川崎市幸区に本社を置くEVベンチャー、FOMM(フォム)だ。EVベンチャーといえばイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が立ち上げた米シリコンバレー発祥のテスラが有名だが、アジアではFOMMも負けていない。FOMMとはどんな会社なのか?なぜ、注目されているのか?

「巻き込む力」で超小型EVの量産へ

FOMMを起業したのは、同社社長の鶴巻日出夫氏。軽自動車最大手のスズキで二輪車などの設計に従事し、後にトヨタ系車体・内装部品メーカーのアラコ(現・トヨタ車体、トヨタ紡績、タカニチ)へ転職し、1人乗り超小型EV「コムス」を開発した。トヨタ車体が製造・販売する新型「コムス」の企画・開発にも取り組む。

2013年に超小型EVの量産を目指すFOMMを設立し、2014年には世界最小級の4人乗りEVを自社開発する。ユニークなのは水害時に水に浮き、水面を移動できること。これは鶴巻社長が超小型EVを構想している時に東日本大震災が発生し、津波に車ごと流されて多数の犠牲者が出たのにショックを受けて実装した機能だ。水害が多い東南アジアでも十分にニーズはある。

       船のように浮かび、移動できるFOMMのEV(同社ホームページより)

日本でもEVベンチャーは珍しくない。が、FOMMで特筆すべきは「巻き込む力」だ。2019年2月にタイの石炭最大手バンプーがFOMMの発行する新株を2000万ドル(約22億2600万円)で引き受け、同社に21.5%出資すると発表した。タイで2019年に初の量産車となる「FOMM ONE」を生産する工場を稼働し、同国内で年間1万台の販売を目指すFOMMだけに、タイの大手企業が出資するのは当然だろう。

しかし、巻き込んでいるのはタイ企業だけではない。2018年10月には四国電力がFOMMに3億円を出資した。そのほかにもエイチ・アイ・エス(H.I.S.)<9603>系のテーマパーク運営会社であるハウステンボス(長崎県佐世保市)や、車載用クラッチディスクなどを手がける自動車部品メーカーのダイナックス(北海道千歳市)、産業用ロボット大手の安川電機<6506>、音響映像(AV)家電メーカーの船井電機<6839>、国内家電量販店最大手のヤマダ電機<9831>など、そうそうたる企業と資本提携をしている。