中堅印刷会社の廣済堂<7868>は25日、旧村上ファンド系企業が同社に対して3月22日から実施しているTOB(株式公開買い付け)について、「中立」の立場をとるとの意見を表明した。これまでの「留保」から一歩踏み込んだ形だが、「現時点においては積極的に反対意見を表明するほどの理由も見出し難い」としている。
このTOBの期限は5月10日。ただ、廣済堂株価は買付価格の1株750円を上回る高値(25日終値は771円)で推移しており、TOBが成立するかどうかは不透明な情勢だ。
廣済堂は米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBO(経営陣が参加する買収)の一環としてTOBを行ったが、4月8日に不成立となった。すでにTOBが進行している途中に、旧村上ファンド系企業から対抗TOBを仕掛けられる形となっていた。
廣済堂をめぐっては、2月初めに旧村上ファンド系の投資会社であるレノ(東京都渋谷区)による株買い占めが表面化した。これによって廣済堂株価は急上昇。3月後半には、レノのグループ企業である南青山不動産(東京都渋谷区)が廣済堂へのTOBを宣言した。
TOBのターゲットとなった企業は賛同、反対、中立、留保などの意見表明を義務付けられているが、廣済堂はMBOを目的とするTOBが進行中だったことから、留保の立場を表明していた。
廣済堂によると、3月末から4月中旬にかけて、レノと村上世彰氏との間で8度の協議を重ねた。廣済堂経営陣にとどまらず、同社の従業員、さらに葬祭事業を手がける子会社の東京博善(東京都千代田区)の役員とも面談の機会を持ったという。
ここで注目されるのが東京博善。同社は都内に町屋(荒川区)、落合(新宿区)、桐ケ谷(品川区)など6カ所の総合斎場を運営し、東京23区の死亡人口の7割以上の火葬を取り扱う“ガリバー”だ。廣済堂の連結売上高の4割近くを占め、本業の印刷事業をしり目に、利益面での貢献がずば抜けている。村上氏が廣済堂に関心を持つのも東京博善の存在が大きい。
廣済堂側が計画したTOBは買付価格を当初の610円から700円に引き上げ、買付期間も3度延長し55営業日という異例の長丁場になったが、応募株式数は目標(所有割合50%)の半分にも届かず、結局、不成立に終わった。
「平成」と「令和」をまたぐ形となった廣済堂をめぐる対抗TOB。大型連休が明けると、いよいよ結末を迎える。
文:М&A online編集部
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