西武信用金庫(東京都中野区)は全国で259金庫がひしめく信金業界で「勝ち組」の代表格とされてきたが、一転、窮地に立たされている。

金融庁は同金庫に対し、反社会的勢力との取引排除に向けた管理体制が不十分であるなどとして、信用金庫法に基づき業務改善命令を出した。主力の投資用不動産向け融資では案件を持ち込む業者による書類の偽装・改ざんを見過ごす事例が多数あり、重大な問題があるとされた。

信頼回復に向けて新経営体制がスタートした同金庫だが、これまでの歩みや業界でのポジションはどうなのだろうか。

特筆される「預貸率」85%、不動産融資が牽引

西武信金で特筆されるのは預貸率(預金残高に対する貸出金残高の割合)の高さ。同金庫のディスクロージャー(経営情報開示)資料によると、2018年3月期の預貸率は85.87%と、業界平均が約50%にとどまる中で、群を抜く水準にある。

大半の信金は営業エリア内で貸出先が限られることなどから資金運用に四苦八苦しているが、西武信金は自力運用をほぼ実現。信金業界の「勝ち組」「優等生」と呼ばれてきた理由もそのあたりにある。

では貸出金はどこに向かったのか。答えは不動産関連だ。

18年3月期末の貸出残高は1兆6618億円で、1年前より2148億円伸ばした。このうち不動産関連融資は9246億円で、こちらは1年前より1930億円増えた。貸出の増加分の大部分が不動産関連だったことが分かる。不動産関連融資の比率は55%に上り、業界平均の2倍以上という突出ぶりだ。

もちろん、不動産関連融資の拡大路線が批判される筋合いにはない。だが、融資審査などで不適切な行為が横行していたとなれば話は別だ。金融庁は同金庫に対し、「業績優先の営業を推進するあまり、内部管理態勢の整備を怠った」と厳しく指摘した。

投資目的の賃貸用不動産向け融資では案件を持ち込む業者が関係書類を偽造・改ざんしていたが、これを職員が見逃していた。中古物件では耐用年数や修繕費用などの適切な見積もりがないまま法定耐用年数を超える長期融資を押し込んでいたケースが多数あったという。こうした業績至上主義が暴力団など反社会的勢力との関係遮断をためらわせる一因だったとも考えられる。

預金量で全国15位、都内4位

信用金庫は1990年代初めに450金庫を超えていた。バブル崩壊後、経営破綻や合併・再編を経て、その数が激減し、今年3月末時点では259金庫。西武信金も合併・再編と無縁ではない。

西武信金は1969年に協立信金(東京都中野区)と武陽信金(東京都福生市)が合併して誕生し、東京区部の西側と多摩地域を主力地盤とする。2002年には平成信金(1992年に渋谷信金と東邦信金が合併)を吸収合併した。現在、都心部、神奈川県、埼玉県を含めて75店舗を展開する。

預金量(18年3月末)では全国15位、都内23金庫では城南信金、多摩信金、城北信金に続く4位で、それぞれ前年より2つ順位を上げている。ただ、今後は世間の厳しい視線が注がれることになる。

同金庫は19年3月期決算で賃貸用不動産向け融資を対象として将来の損失発生に備えて予防的に約33億円の追加引当を決めた。自己資本比率9.66%、不良債権比率1.27%を維持しており、財務の健全性には全く問題がないとしている。

信頼回復への道筋は

とはいえ、シェアハウスなど投資用不動産をめぐる不正融資問題に揺れるスルガ銀行では顧客離れによる預金流出が起きる事態となっている。西武信金でも今後、同様の動きが広がる可能性がぬぐえない。

在任9年に及んだカリスマリーダーの落合寛司理事長は引責辞任に追い込まれた。顧客本位の企業風土づくりなど信頼回復への道筋をどうつけていくのか、新経営体制の実行力が早速問われる。

 業務改善計画は6月28日までに提出することになっている。

文:M&A online編集部