統合後の世界生産・販売台数で史上最大の1560万台に達する可能性もあった巨大M&Aが「ご破算」になった。2019年5月27日に仏ルノーと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)との経営統合交渉が明らかになってから、わずか10日後のスピード撤退に世界の自動車業界も呆気にとられている。

仏政府は日産に「破談」の責任を転嫁

交渉打ち切りを一方的に宣言したFCAは、その理由として「フランスではこのような統合がうまく進む政治情勢ではないことが明確になった」と、名指しこそ差し控えたものの仏政府による過度の干渉を批判した。

6月7日にはイタリアのディマイオ副首相がラジオ番組に出演し、「仏政府の干渉で経営統合は失敗した。統合は市場の営みであり、イタリア政府はその点を尊重していたがフランスは見苦しかった」と、こちらは仏政府を名指しで批判した。

経営統合破談の「戦犯」扱いされたフランスのルメール経済・財務相は「すべての関係者と建設的に交渉を進めたが、4つの条件のうち日産自動車<7201>の同意が得られなかった」のが破談の原因と、責任転嫁する醜態をさらしている。

日産との経営統合難航が、ルノーを強硬策へ走らせた=写真は西川廣人日産CEO(ルノーホームページより)

もっとも、仏政府が日産をやり玉にあげたい気持ちも分からなくはない。仏政府がFCAに強硬な姿勢で臨んだのは、日産との経営統合交渉が難航していたためだ。日産は仏政府の意向を受けたルノーとの経営統合に難色を示し続けており、合意には程遠い状況だ。

その背景にはルノー・日産間で取り交わしている企業間協定の「RAMA」がある。同協定には「日産の経営判断にルノーから不当な干渉を受けた場合、日産の判断でルノー株を買い増す権利がある」「日産の取締役会決定事項に、ルノーは株主総会で反対できない」といった事実上の「防波堤」がある。