米アップルが泥沼状態だった米半導体大手クアルコムとのスマートフォン(スマホ)の特許をめぐる知的財産紛争で全面和解に踏み切った。そもそも、この訴訟は巨額のライセンス料金を不服としてアップルが提訴し、それに対抗してクアルコムが「アップルは米インテルにモデムの技術情報を横流しし、特許を侵害している」と申し立てた構図。先に拳(こぶし)を振り上げたのはアップルなのだ。

事実上、アップルの「全面敗北」で終結

そのため、今回の全面和解はアップルの「全面敗北」との評価がもっぱら。2019年4月16日(米国時間)に両社の全面和解のニュースが駆け巡ると、これを好感してクアルコムの株価は始値の57.46ドルから終値は70.45ドルまで22.6%も高騰した。一方、この日、アップルの株価はほとんど動いていない。

こうした市場の見方には根拠がある。アップルの第5世代移動体通信システム(5G)への出遅れである。2019年4月3日に米韓両国で商用サービスが始まった5Gだが、アップルのiPhoneは対応していない。それどころか2019年9月に発表予定の次世代iPhoneでも対応できない見通しだ。

すでにライバルのアンドロイド陣営では5Gスマホを投入している(クアルコムホームページより)

理由は通信の基幹部品であるモデムチップが5G対応できないから。現時点で満足な性能を持つ5Gモデムを量産可能なのはクアルコムと中国・ファーウェイのみ。ファーウェイは米トランプ政権が制裁対象としている企業で、現時点ではクアルコム一択となる。

アップルはインテルに5Gモデムの開発を依頼したが、省電力性やコンパクト性、通信安定性、耐久性などスマホに求められる厳しい要求に応えられなかったようだ。アップルとクアルコムの和解発表と同時に、インテルはスマホ向け5Gモデムからの撤退を発表している。

それにしてもモデムなど通信半導体の「クアルコム一強」は早くから分かっていたはず。なぜ、アップルはクアルコムと袂(たもと)を分かつ訴訟に踏み切ったのか?