ソフトバンクグループ<9984>の100%子会社・ソフトバンクが、10月に上場承認を受け、12月19日を軸に上場日を調整中とロイターが報じています。上場が実現すれば、時価総額は7兆~8兆円規模、市場から調達する資金は2兆5000億円に上る見通し。2018年最大のIPO案件となります。少数株主の意見が通りにくい親子上場に対して批判も多い中、孫正義氏はいったい何を狙っているのでしょうか? その陰には最大の関心を向けているソフトバンク・ビジョン・ファンドの存在がありました。
ソフトバンクグループの2017年度の売上高は9兆1588億円でした。構成比はこのようになっています。
売上高 | 構成比率 | |
スプリント | 3兆6020億円 | 39.32% |
国内通信 | 3兆2298億円 | 35.26% |
ヤフー | 8844億円 | 9.65% |
その他 | 1兆4426億円 | 15.75% |
今回上場する予定のソフトバンクは、上の表の「国内通信事業」のことです。グループ全体の売上構成比率の35%を占めています。グループの屋台骨ともいえる会社です。なぜ、このタイミングで上場するのでしょうか?
もちろん、2兆5000億円ともいわれる資金調達があります。しかしながら、孫正義氏はグループ全体のシナジー効果を高める「群戦略」がその核にあるとしています。国内通信事業を担うソフトバンクは、巨大なファンドを化したグループの枝葉の一つとなるわけです。まずはその戦略が何なのかを説明します。
群戦略とはITを中心とした様々な方面のトップ企業に対して20~30%の株式を取得し、各社が連携を強めてグループ全体の繁栄を促すというもの。この20~30%という部分がポイントです。業界ナンバーワン企業の一部を取得するだけで、完全なソフトバンク色に染めようとはしません。各社の経営の独立性を保つのです。ソフトバンクグループは受け皿です。その器の中で、ナンバーワン企業群のシナジー効果を促そうとしているのです。
その強力な接続因子となるのが、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の存在です。すでに以下のような企業に出資をしています。
孫正義氏は、クラウドが発達することで地球全体がスマート化すると予言しています。クラウド技術のハード面を支える半導体のアームやエヌビディアと、クラウド上でサービスを展開するイーコマースやビジネスチャットツール、オンライン医療ポータルを結び付けようとしているのです。提供したサービスから情報を吸い上げ、チップをAI化。ゆくゆくは個人のライフスタイルに、最適化したサービスを提供できるようになるというわけです。
そこに通信インフラは欠かせない存在。上場するソフトバンクは、そこを担う企業の一つとなるのです。