ルネサスエレクトロニクス<6723>が7330億円(67億ドル)を投じて米半導体メーカーのインテグレーテッド・デバイス・テクノロジーズ(IDT、カリフォルニア州)を買収することで合意した。買収金額は日本企業のM&A案件として今年2番目。金額トップは武田薬品工業によるアイルランド製薬大手・シャイアー買収の6兆8000億円と文字通りケタ違い。これに次ぐ富士フイルムホールディングス(HD)の米ゼロックス買収(6710億円)を約600億円上回った。

ルネサス、1両年でM&Aに1兆円投じる

今年に入って1000億円以上の買収は今回のルネサスを含めて11件(表参照)となったが、このうち海外企業を対象としたM&Aが10件を占める。

ルネサスが買収したIDTは1980年設立で、米ジャスダックに上場する。直近業績は売上高927億円、営業利益122億円、純資産710億円。買収金額7330億円は日本の半導体メーカーとして過去最大。6790億円は銀行から調達する。買収は2019年6月までに完了させる予定。ルネサスは2017年2月に同じく米半導体のインターシル(カリフォルニア州。2018年1月にルネサス・エレクトロニクス・アメリカに社名変更)を3000億円超で買収しており、一両年で1兆円以上をM&Aに投資する格好だ。

今回傘下に収めるIDTが得意とする通信用半導体はデータセンターや通信インフラ向けに幅広く使われるほか、自動運転やEV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド電気自動車)などの車載分野で需要拡大が見込まれている。ルネサスは車載用半導体で世界のトップクラスにあり、補完性の高い製品を取り込むことで顧客企業への提案力向上につなげる考えだ。

ルネサスの主力拠点の一つ、武蔵事業所(東京都国分寺市)

ルネサスの出自は日立製作所、三菱電機、NEC。日立と三菱の半導体部門が統合した旧ルネサステクノロジと、NECエレクトロニクスが合併して2010年に発足した。現在、世界で戦える日本の半導体メーカーは車載用で圧倒的な強みを持つルネサスのほか、画像センサー首位のソニー、半導体設計大手の英アームを子会社化したソフトバンクグループだけ。

ソフトバンクグループによるアームの子会社化(2016年発表)は買収取得金額が3兆3000億円と当時、日本企業として過去最大のM&Aだったが、これを2倍のスケールで上回ったのが今年5月発表の武田薬品によるシャイアー買収だ。7兆近い買収は当分破られることがなさそうだが、これに次ぐ今年2位につけたのが今回のルネサス案件。

代わって3位に後退したのが富士フイルムHDによる米ゼロックス買収(1月発表)。ただ、この案件は米ゼロックス経営陣が反旗を翻し、両社の訴訟合戦に発展しており、買収計画は事実上破たん状態に陥っている。

7月には産業ガス国内首位の大陽日酸が米同業大手のプラスエアの欧州事業を6438億円で買収すると発表した。5000億円超は大陽日酸を含めて4件で、5位のJTによるロシアたばこ会社のドンスコイ買収(1900億円)になると、1000億円台。

1000億円超、国内同士は伊藤忠のユニー・ファミマTOBが唯一

今年に入って買収金額が1000億円を超える案件はこれまで11件。海外M&Aが大半を占める中で、唯一の日本企業同士の案件が伊藤忠商事によるユニー・ファミリーマートホールディングスの子会社化。8月に1200億円を投じてTOB株式公開買い付け)を実施して所有比率を50・1%(従来41.5%)に高め、経営権を握った。

2018年:買収金額1000億円超の案件 (社名は一部略称)
1 5月 武田薬品、アイルランド製薬大手シャイアーを子会社化(6.8兆円)
2 9月 ルネサスエレクトロニクス、米半導体メーカーのIDTを買収(7330億円)
3 1月 富士フイルムHD、米ゼロックスを子会社化(6710億円)
4 7月 大陽日酸、米産業ガス大手、プラスエアの欧州事業を買収(6438億円)
5 3月 JT、ロシアのたばこ4位ドンスコイを子会社化(1900億円)
6 8月 JT、バングラデシュの2位のたばこ事業を買収(1645億円)
7 1月 第一生命HD、米リバティライフの既存保険契約を買収(1400億円)
8 5月 リクルートHD、求人情報サービスの米グラスドアを子会社化(1285億円)
9 3月 東レ、オランダの炭素繊維メーカーのテンカーテを子会社化(1230億円)
10 4月 伊藤忠商事、ユニー・ファミマHDをTOBで子会社化(1200億円)
11 4月 日本電産、冷蔵庫部品メーカーの米エンブラコを子会社化(1175億円)

文:M&A Online編集部