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【Q&A】ルノーとの合併で「どうなる?日産」

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日産に「合併メリット」はない

Q 日産が合併を拒否する方法はあるか

A ルノーは日産の45%の株式を保有する筆頭株主だ。日産もルノーに15%出資しているが、保有株には議決権がないのでルノー側の意思決定には関与できない。日本の会社法によれば、日産がルノー株を追加取得して出資比率を25%以上に引き上げれば、ルノーは日産株の議決権を失う。同法を利用して経営統合を阻止する方法はあるが、それを決められるのはゴーンCEOのみ。彼が合併を認めれば、食い止める手段はない。

ゴーンCEOが「その気」になれば日産は合併に抗えない

Q ゴーンCEOがフランス政府に徹底抗戦する可能性は

A 2014年にフランス政府がルノーへの持ち株比率を20%に引き上げて(2017年に一部を売却し、現在は15%に戻っている)日産との合併を迫ったが、ゴーンCEOが拒否して両者の関係は悪化した。ただ、2018年3月になってゴーンCEOの発言も「どうして経営統合がないと言えるのか」と、合併容認に傾いている。日産買収に意欲を燃やすマクロン氏が大統領に就任したこともあり、仮にゴーンCEOが激しく抵抗したところで筆頭株主のフランス政府がCEOの首を挿(す)げ替えれば合併は避けられない。

Q 経済産業省は合併に慎重なようだが、政治ルートでの合併回避は期待できないか

A 政治的な圧力をかけようにも、相手はフランス政府と欧州連合(EU)だ。日本政府がどうにかできる相手ではない。

Q 合併による「スケールメリット(規模による優位性)」は期待できるか

A 大型合併の根拠として「自動車業界では規模がものをいう」とのセオリーが持ち出されるが、これまでの自動車再編を振り返れば必ずしも正しいとはいえない。1990年代後半にダイムラークライスラーの誕生や米フォード・モーターによるマツダ<7261>の救済、ルノー・日産連合など自動車業界の大再編が相次いだが、その後の21世紀前半に成長したのはトヨタ自動車<7203>やホンダ<7267>、独BMWなど大再編に積極的な関与をしなかったメーカーだ。

Q なぜ大型合併による「スケールメリット」は成功しなかったのか

A コスト削減には成功した。ただ、車が売れなかっただけだ。いくらコストダウンできても、売れなければ意味がない。自動車は「住宅の次に高い買い物」といわれる商品で、ユーザーの好みに大きく左右される。コスト削減のために部品や基本設計を共通化すれば、似たような車となり個性が消える。ユーザーにとっては魅力的な商品でなくなるのだ。

仮にスケールメリットにより劇的に価格を引き下げたとしても、ヒットするかどうかわからない。「10万ルピー(16万3600円、当時の為替レートでは約28万円だった)カー」として話題になった印タタ・モーターズの「ナノ」(実際の販売価格は11万2735ルピー=18万4500円)は、「世界一低価格志向が強い」といわれるインド市場ですらヒットしなかった。「ナノ」の2代目モデルとなる「GenX Nano」は最低価格を19万9000ルピー(32万5600円)に引き上げている。

Q とはいえ、ルノー・日産連合は成功例だ

A ルノー・日産連合が失敗しなかったのは、日産が米国と中国という巨大自動車市場で成長した功績が大きい。実質的には「ルノー・日産連合の成功」ではなく、「日産単独の成功にルノーが乗っかっている」という状況だ。もちろんルノーにとっては「金のなる木」を得たという意味で「大成功」だった。だからフランス政府は、その関係を永続的なものにするために合併を強引に進めているのだ。

Q ルノー・日産の合併が実現すれば、独フォルクスワーゲンに次ぐ世界第2位の自動車メーカーが誕生する。3位のトヨタは厳しい競争を強いられるのではないか

A 実質上一つの会社として機能していたルノー・日産連合が、名目上でも一緒になる。今回の合併はそれ以上でも、それ以下でもない。つまり、トヨタの競争環境は変わらない。日産が「ルノー日本支社」になったところで、トヨタの業績に影響は与えないだろう。むしろ「国産車メーカー」としての看板を失った日産から、国内販売でシェアを奪えるというプラスの側面があるかもしれない。

Q トータルでみて、ルノーとの合併は日産にとってメリットがあるのか

A 90年代後半の経営危機からの脱却や共同調達など、ルノーと一緒になることでもたらされるメリットは全て得られた。合併で新たに得られるものは、ほとんどない。これがダイムラーのような高級車メーカーならば合併によるブランドイメージの向上が期待できるが、大衆車メーカーのルノーでは無理だ。日産にとってはデメリットの方が大きいだろう。

合併が避けられない日産の「運命」は…

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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