「工作機械事業に本格参入する。あと3社買収し、2025年には5000億円の規模に成長させる」
日本電産<6594>の永守重信会長は、2022年4月21日に開催した2022年3月期の決算説明会で、こう宣言した。
日本電産は2021年8月に三菱重工業の子会社で、門形五面加工機や横中ぐりフライス盤などの大型機に強い三菱重工工作機械(現・日本電産マシンツール、滋賀県栗東市、2021年3月期の売上高は189億300万円=東京商工リサーチ調べ)を、2022年2月に中小型マシニングセンターに強いOKK<6205>(2022年3月期の売上高は137億9100万円)の工作機械メーカー2社を子会社化した。
2025年までにさらに3社の工作機械メーカーを買収し、日本電産シンポ(京都府長岡京市、2021年3月期の売上高は739億円)が手がけているプレス機械や減速機などを含めて機械事業グループを構成し、日本電産の一つの大きな柱に育てる計画という。
同事業で2025年に5000億円の売り上げを目指すとともに「2030年には1兆円の事業に育成したいという意気込みでやっている」とし、機械事業の急成長に強い熱意を示した。
機械事業は、日本電産の今後の主体事業であるトラクションモーター(電気自動車の駆動力を発生させる中核部品)に関係する加工や部品などを手がけるほか、工作機械そのものの販売にも力を入れる。
買収時に赤字だった日本電産マシンツールが黒字転換し、やはり買収時に赤字だったOKKも黒字化できる見通しが立つなど、PMI(買収後の統合プロセス)が順調に進んでいることから、機械事業としても収益を上げられると判断、本格的に参入することにした。
永守会長は「中国の工作機械メーカーの技術がどんどん上がっている。日本の工作機械メーカーはこのままでいいのかと心配になった」としたうえで「日本の工作機械メーカーは規模の小さな会社ばかりで、これでは日本の工作機械業界が強くなるとは思えない。このため、この分野に出ていこうと思った」と本格参入に至った経緯を説明。
さらに「これからは中国の機械メーカーとどう戦うのかということを、日本の工作機械業界は真剣に考えないといけいない」と提言。
「基幹産業で日本の企業が弱くなれば、我々にとっても大きな損失になるという点から、この業界に参入して、もっと安くて、納期が早くて、健全な利益を上げられる企業を目指すことにした」とし、「そこに我々にとって大きな大義がある」と強調した。
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文:M&A Online編集部
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