工作機械業界で、主要顧客である自動車分野以外の新市場の開拓や、製造業が抱える自動化や省力化などのニーズに応えるために、自社の技術だけでは不足する部分を補う手段としてM&Aを活用するケースが増えつつある。
中堅工作機械メーカーのエンシュウは、不振の工作機械事業で構造改革を加速する。人員の再配置や、ロボットや搬送装置などを手がける企業や事業の買収による新規事業の拡充などを進める。
工作機械をはじめ、火器や建材、特装車両など幅広い事業を手がける豊和工業は、さらに業容を拡大するためにM&Aを活用する。新たな資源やノウハウなどを獲得しインオーガニック成長(外部の資源を活用した成長)を追求する。
中堅の工作機械メーカーの高松機械工業は自動車部品加工事業から撤退する。採算が厳しく、今後の成長性も見込めないため、早期の撤退を決断した。今後、工作機械事業にリソースをシフトしていく。
DMG森精機(東京都江東区)は企業買収や事業継承で技術とノウハウを取り込み、製品ラインアップに磨きをかけ、世界有数の工作機械メーカーだ。自動車や航空宇宙、医療という主力産業が激変する時代にあるなかで、M&Aによるシナジーでさらなる成長を目指す。
工作機械大手のオークマは、機械が自律的に高精度・高生産性と、脱炭素を両立する工作機械「Green-Smart Machine」を、EV(電気自動車)や半導体製造装置、航空・宇宙、建機、農機、油圧機器などの生産向けに拡販する。
自動車部品などを手がけるジェイテクトは、不振の欧州事業の立て直しに向けニードルローラーベアリング(針状ころ軸受)の欧州事業をドイツの投資会社に譲渡する。さらなる子会社や事業の売却の可能性を示唆しているが、果たして次の一手は。
時計と工作機械を主力事業とするシチズン時計は、20年近く前に傘下に収めたミヤノ(現シチズンマシナリー)が製造するミヤノブランドの中・大型工作機械で、グローバル販売戦略を推進する。
半導体関連事業に参入した北川鉄工所は事業の拡充と、工作機器事業の海外市場開拓などを目的にM&Aを加速する。低採算からの脱却が目的で、今後3年間でM&Aに最大60億円を投じる。
ブラザー工業は、工作機械、産業用プリンター、業務用ラベルプリンター、新規事業の領域で、今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)に、M&Aなどに2000億円を投じる。