【日立】足かけ14年、上場子会社22社の「後片付け」がついに完了へ

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日立グループに持ち分法適用関連会社として残留した日立建機(東京・東上野の本社)

日立物流に対する米投資ファンド、KKRによるTOB(株式公開買い付け)が10月末に始まった。これを受け、日立物流は2023年4月に「ロジスティード」への社名変更を発表した。日立製作所を頂点とする日立グループではかつて20社を超える上場子会社が群雄割拠していたが、再編・整理を通じた「後片付け」が足かけ14年を経て、いよいよ終わりの時を迎えた。

日立物流のTOB開始、グループ外へ

米KKRはTOBを11月29日まで実施し、日立物流株の60%余りを取得する。買付代金は最大4492億円。筆頭株主の日立が保有する39%強の株式はTOB成立後、日立物流が約2200億円を投じて自己株取得の形で買い取る予定で、取引総額は6712億円に達する。

日立は2016年に、子会社だった日立物流の保有比率を下げ、持ち分法適用関連会社としており、今回の追加的な株式売却は既定路線。日立物流は1989年以来の株式上場にピリオドを打つとともに、日立グループから離脱する。新社名「ロジスティード」には物流企業としてこれまでの枠を超えたサービスの提供、スピード感などの意味が込められている。

リーマン後の巨額赤字が引き金に

日立が上場子会社の再編・整理に着手したのは2009年にさかのぼる。同年3月期決算で7873億円の最終赤字を計上した。日本の製造業として当時過去最大の赤字で、前年秋に起きたリーマン・ショックの影響が直撃した。

電撃的なトップ人事があったのはこの時だ。経営立て直しを託されたのは日立元副社長で子会社の日立マクセル会長に転出していた川村隆氏。6年ぶりに日立本体に呼び戻され、会長兼社長に就いた。

当時、日立は上場子会社を22社抱え、巨艦そのものだった。東芝が“公家集団”なら、“野武士集団”と評された日立は独立心が旺盛な子会社がひしめき、オール日立で事業構造の変革が思うように進んでいなかった。ここに大ナタを振るったのが緊急登板した川村氏。経営の軸と位置付けるIT事業と社会インフラ事業との相乗効果を基準とし、グループの事業の入れ替えに乗り出した。

日立グループの中でも御三家と呼ばれた名門が日立金属、日立化成、日立電線。だが、日立電線は2013年に日立金属による吸収合併で姿を消した。日立化成は2020年に昭和電工に買収され、日立グループを去った。

日立製作所の本社が入るビル(東京・丸の内)

最終的に半数以上の12社がグループ離脱

上場子会社として最後の最後まで残っていたのは日立建機と日立金属の2社。日立建機は上場を維持し、持ち分法適用関連会社としてグループにとどまるが、日立金属はグループ離脱に伴い2023年1月に「プロテリアル」に社名を変更する。

日立建機については8月、日立が保有する株式約51%のうち26%を伊藤忠商事と日本産業パートナーズ(東京都千代田区)の折半出資会社に売却した。一方、日立金属をめぐっては米ベインキャピタル、日本産業パートナーズなど日米投資ファンド連合よるTOBが10月末に成立。これを受け、日立は保有する日立金属株の53%すべてをファンド連合に売却する手はずだ。

かつて22社あった上場子会社のうち、日立グループからの離脱組は半数以上の12社。残る10社が完全子会社化・合併、あるいは持ち分法適用関連会社としてグループに残留した。

再上場・独立を果たしたマクセル

グループ外に出て唯一、上場を維持しているのが現マクセル(旧日立マクセル)だ。2010年に日立が完全子会社化し、上場廃止となったが、4年後の2014年、東証1部(現東証プライム)に返り咲いた。2017年に資本面で独立を果たし、日立を社名から外した。

日立は足元の2023年3月期業績について売上高1.3%増の10兆4000億円、最終利益2.8%増の6000億円を見込む。一連の上場子会社再編・整理の起点となった2009年3月期の売上高は10兆円で、さほど伸びがわけではないが、最終損益は翌2010年3月期の赤字を最後に、以降、安定的に黒字を積み上げてきた。

◎日立:上場子会社22社(2009年時点)とその後。太字はグループから離脱(※合併先の企業が離脱)

日立情報システムズ 2010年完全子会社化
日立ソフトウェアエンジニアリング 2010年完全子会社化。現・日立ソリューションズ
日立システムアンドサービス 2010年完全子会社化。現・日立ソリューションズ
日立マクセル 2010年完全子会社化。14年に再上場し、17年に「マクセル」として独立
日立プラントテクノロジー 2010年完全子会社化
日立プラント建設サービス 2010年上場廃止。現・日立プラントサービス
日立電線※ 2012年、日立金属に吸収合併される
TCM(旧東洋運搬機) 2012年に産業革新機構に売却。現ロジスネクストユニキャリア
新神戸電機※ 2012年、日立化成による子会社化(16年に吸収合併)
日立ビジネスソリューション 2012年、日立ソリューションズによる完全子会社化に伴い上場廃止
日立メディコ 2014年完全子会社化。16年に日立本体が吸収合併
日立機材 2015年にMBO(経営陣による買収)で非公開化。現センクシア
日立ツール 2012年に日立金属の完全子会社に。15年に三菱マテリアルに売却。三菱日立ツールを経て、現MOLDINO
日立キャピタル 2016年、持ち分法適用関連会社化。
21年に三菱UFJリースと経営統合し、三菱HCキャピタルに
日立物流 2016年、持ち分法適用関連会社化。22年に米KKRがTOBで子会社化。23年4月に「ロジスティード」に社名変更へ
日立工機 2017年、米投資ファンドのKKRに売却。現・工機ホールディングス
クラリオン 2018年、自動車部品メーカーの仏フォルシアに売却
日立国際電気 2018年、持ち分法適用関連会社化(上場廃止)。米KKRがTOBを実施
日立化成 2020年、昭和電工に売却。現・昭和電工マテリアルズ
日立ハイテク 2020年完全子会社化
日立金属 2022年、米投資ファンドのベインキャピタルに売却。
23年1月に「プロテリアル」に社名変更へ
日立建機 2022年、持ち分法適用関連会社化。保有株式の半数を伊藤忠商事と日本産業パートナーズに売却


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文:M&A Online編集部

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