米国の大手製薬会社メルク(ニュージャージー州)の日本法人MSD(東京都千代田区)は、新型コロナウイルス感染症の飲み薬モルヌピラビルを、病院や薬局が他の薬剤と同じように卸売業者を通じて購入できる一般流通を2022年9月16日から始める。
これによって、各病院などが必要な数量のモルヌピラビルを確保できるようになり、医師が適切と判断した新型コロナウイルス感染症患者に対し、早いタイミングで処方することが可能になる。
ワクチンと飲み薬が揃うことで、新型コロナウイルスがインフルエンザ並みの感染症になるわけで、コロナ前の日常に戻れる日は着々と近づいていると言えそうだ。
モルヌピラビルは2021年12月24日に特例承認されたものの、承認時点では供給量が限られていたため厚生労働省が買い取り病院や薬局などに配分していた。
この間MSDはモルヌピラビルの供給能力を増強し、一般流通の見通しが立ったことから薬価基準収載の申請を行い、8月18日に薬価基準に収載されていた。一日当たりの薬代はおよそ1万8800円で、5日間の投与が必要。
モルヌピラビルは特例承認の治療薬のため、投与する際には医師から患者への有効性や安全性についての十分な説明と、患者自身か両親、配偶者、後見人らからの同意書が必要となる。
モルヌピラビルは、RNA(たんぱく質の合成などを担う物質)を構成するアミノ酸に構造が似ている別の物質をRNAに取り込ませ、ウイルスに変異を生じさせることで増殖を抑えるリボヌクレオシドアナログといわれる技術を用いている。
米国のエモリー大学(ジョージア州)が設立したバイオテクノロジー企業Drug Innovations at Emory (DRIVE), LLCとメルクなどが連携して開発を進めてきた。
日本の企業も新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発に取り組んでいるが、周回遅れの感は否めない。
塩野義製薬<4507>の新型コロナウイルス治療薬ゾコーバについては、厚生労働省が2022年7月に承認を見送ったほか、富士フイルム富山化学(東京都中央区)のアビガンについても、新型コロナウイルス治療薬としての臨床試験を事実上取り止めている。
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文:M&A Online編集部
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