東芝の事例を疑いの目で見ると、のれんの減損を回避するためにグルーピング単位を故意に大きくしているようにも見えなくはありません。
一方、WECグループの4つのプロダクトラインはいずれも原子力事業という大きな屋根の下に集う運命共同体でもあり、それぞれに相互依存関係があることも十分に考えられます。
このように減損のグルーピングはけっこうファジーです。
外部者である私が、グルーピングが許容範囲なのか不適切なのか簡単には断定できません。
しかしながら、のれんの減損というのは会計上の出来事である以前に経営上の出来事です。
経営のピンチを会計数値で早期発見することは極めて重要です。その点、大きすぎるグルーピング単位は問題の早期発見を妨げてしまうことがあります。
東芝では2013年度まではWECを含む「WEC事業部」
このグルーピングの変更は東芝内部の組織・責任体制の再編によるものですが、結果として減損の表面化を遅らせた可能性はあります。
せっかくWECが認識していた減損がグループ経営管理に生かされていなかったとしたら、連結上のグルーピングが大きかったことは、東芝自身にとっても残念だったと言えるでしょう。
のれんの減損の問題に限らず、東芝は不適切会計によって構造改革が遅れたと言われています。
投資家を気にするあまり意思決定を歪めていないか、CFOや経理部長は十分に注意する必要があるでしょう。
文:株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.047 2017.02.15)より転載
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