政府はアテになるのか?

2023年までに日本が20社を誕生させたとしても、すでに米国では115社、中国では70社のユニコーン企業があり、その格差は歴然としている。問題は「当たるも八卦、当たらぬも八卦」のベンチャーに投資する「リスクマネー」だ。そもそも国内のリスクマネー不足が、米中との「ユニコーン企業格差」の原因なのだ。

メルカリやMTGがユニコーン企業になったのは、空前の低金利で行き場を失った資金が流れ込んでいるため。いわば「カネ余り」がユニコーン企業を生んでいる。将来、日本銀行が金融引き締めに政策変更して金融機関や投資ファンドがリスクマネーを一斉に引き上げるようなことがあれば、ベンチャー企業の「屍(しかばね)累々」になりかねない。こうした場合の信用保証には、政府の力が必要になるだろう。

とはいえ、政府も万能ではない。特に問題になりそうなのが「目利き力」だ。政府主導の官民ファンドである産業革新機構は2017年8月の時点で、ベンチャー投資の実に80%以上で損失を出していることが明らかになっている。日本の漫画やゲームをハリウッドで映画化するというオールニッポン・エンタテインメントワークスに22億円を出資したが、1本の映画も制作できないまま同機構はわずか3400万円での売却を余儀なくされた。23億円を出資したフラッシュメモリー開発ベンチャーのGENUSIONは経営破綻している。

「10件に1件が当たればいい」といわれるベンチャー投資だけに、「損失率80%以上」は想定の範囲内ともいえよう。ただし、「10件に1件の成功例があれば」だ。同機構は電子出版を手がける出版デジタル機構に50億円の投資し、ほぼ同額の回収に成功しているが、収支トントンのレベルで他の損失を補填するには物足りない。「目利き力」を発揮するには政府ではなく民間の力が必要だ。その意味では「未来投資戦略2018」によるベンチャー支援は、ユニコーン企業誕生の足を引っ張る可能性すらある。

日本では米国や中国と比較してリスクマネーが乏しいという状況を考えると、民間企業によるベンチャー企業のM&Aが最も現実的なユニコーン企業育成法かもしれない。事実、ユニコーン企業候補と目されているIoT通信サービスのソラコムは2017年8月にKDDI<9433>の傘下に入った。すでにユニコーン企業とみられているプリファード・ネットワークスにもトヨタ自動車<7203>やファナック<6954>などが出資している。こうしたユニコーン育成型のM&Aにも要注目だ。

ベンチャー投資
日本では投資家やファンドよりもM&Aがアテになる

文:M&A Online編集部