中小企業の後継者難が深刻化する中、親族以外の第三者に事業承継する際、その手法としてM&Aの活用が注目されている。当事者である中小企業の見方はどうなのか。東京商工会議所が公表した「事業承継の実態に関するアンケート」結果のうち、M&Aにフォーカスしてみると。

従業員に承継できない場合、半数以上がM&Aを検討

 アンケートは東京23区の中小企業1万社を対象に実施し、1907件の回答があった(回答率19%)。事業承継の準備状況や後継者の有無、後継者が不在な場合の対策、親族内承継での課題、M&Aに対するスタンスなどを聞いた。

 息子ら親族に後継者がいないケースでまず想定されるのが従業員への事業承継。従業員承継における課題では、「借入金・債務保証の引き継ぎ」と「後継者への株式譲渡」の答えが各56%と最も多く、次いで「後継者の教育」が49%だった(複数回答)。

 そのうえで、従業員に承継できなかった場合、5割を超える企業が民間仲介機関を利用したM&A、取引先・同業者への売却打診を検討すると回答した。一方で、2割近い企業は従業員承継できなかった場合、廃業すると答えた。

M&Aのイメージ…「良い手段」39% 「よく分からない」47%

 M&Aに対するイメージは、「良い手段だと思う」39%、「良い手段だと思わない」14%、「よく分からない」47%。また、自社がM&Aの対象となるかどうか、の問いには「なると思う」24%、「ならないと思う」40%、「よく分からない」36%だった。

 自社を売却する際、特に知りたいことは、「自社がいくらで売却できるか」37%、「自社を買いたい企業があるか」31%、「従業員の待遇・自分の処遇」20%、「どのように売却の交渉をしたらよいか」12%、「売却に必要な費用」11%―の順で上位を占めた(3項目まで複数回答)。一方、「売却を考えたことがないので特にない」は45%で、全体で最も割合が大きかった。

 自社を売却する場合に特に課題と思われることは、表の通り、「役員・従業員への対応」「取引先との関係性」「経営資源(自社の強み)の磨き上げ」「借り入れに対する個人保証」などが上位となっている。

自社を売却する場合に、特に課題となること(3項目まで複数回答)<有効答数1411、無回答496>

質問割合(%)
・経営資源(自社の強み)の磨き上げ  28.8
・役員や従業員への対応  35
・取引先との関係性  34.2
・株式分散の集約化  3.3
・事業用不動産の処遇  5.1
・担保差し入れしている個人名義不動産の処遇  7.9
・会社保有だが、主に個人で使用する資産(社有車など)の処遇  3.2
・簿外資産および簿外負債  2.3
・借り入れに対する個人保証  25.6
・M&A後の自身の生活設計  13
・係争問題  1.3
・特にない  25.7
・その他  2.1

 日本では中小企業経営者の高齢化が進んでいる。今後10年間で70歳(平均引退年齢)を超える中小企業経営者は約245万人になると予想されているが、半数以上が事業承継の準備を終えていない。このため、政府は親族以外の第三者への世代交代を円滑に推し進めるため、M&Aを通じた事業承継について登録免許税・不動産取得税の軽減など支援措置を拡充している。

文:M&A Online編集部